小さい頃は“パスタ”なんていわずに“スパゲッティ”と呼んでいたし、
「今日はスパゲッティにしようか」
と母親が小さいJISUI兄弟に言う場合は、
それはつまり、絶対的にナポリタンのことだった。
ただ、スパゲッティを“パスタ”と呼ぶようになり、
ミートソースの美味さに声を上げ、
ボンゴレビアンコのシンプルな力強さに圧倒され、
明太子の異色の組み合わせに目を見開き、
ペペロンチーノの奥深さに唸るようになると、
小さい頃に食べたあのケチャップ味のナポリタンが、
変にクドクドとしてて少々油っぽく感じるようになり、
どうにも受け入れられなくなった。
JISUIもやがて独居して生活するようになり、
色々なものを食べて、知り、自分でも色々と作った。
しかし、突然無性にナポリタンが食べたくなることがある。
別にJISUIに限らず、
ある程度の年代以上にはどうもその傾向があるようだ。
ただ、JISUIにとってはやはりナポリタンとは、
変にクドクドとして少々油っぽいものであった。
そこでどうしたらもっとおいしくナポリタンが食べれるのか。
ナポリタンは食べたいけど、あのくどさはちょっと。
でも、たべたい。
JISUIは単純に考えた。
濃いケチャップを炒めることで
さらに煮詰めてしまうからくどくなるのか。
それならば薄めればいい。
と。
香味野菜を炒めて煮詰めた、少し凝ったトマトソースよりも、
安価で常に冷蔵庫に安置されているケチャップのほうが、
自炊料理程度には色んな意味で正しい。
肉と玉葱とピーマンを切り出し、
フライパンで十分に炒めたら、
少々の酒と水か茹で汁を注いでアルコール分を飛ばし、
ケチャップをどぼっと入れる。
やや粘性のある「ケチャップソース」に、
茹で上がったスパゲッティを絡めて、
ひとつまみ胡椒を加えれば、
JISUI流のナポリタンの出来上がり。
ケチャップだけで作るより、
少々の酒と水分でのばしたケチャップソースは、
丁度良い加減で麺と絡まり、くどさを感じさせない。
ただ、自分流のナポリタンを食べてJISUIがいつも思い出すのは、
兄弟ならんで食べた、あの幼い頃の時間と、
母親が作ったケチャップだけの味がするナポリタンだった。
