『全然悪くない子で
 拍子抜けしたわ(・_・;』

週末の亮太に誘われた食事会の帰り道。

駅に向かう途中、
少し前を歩く雅樹に
きょうこはそう言った。


雅樹は振り返る。
『頭の悪そうな子でも来ると思ったか?笑』


『うん。絶対そうであれ、、、と願ったわ(・_・;』



食事会は
亮太の親の紹介だと言う、
日本料理店で行われた。

見るからに“高そう”なところだ。


個室に案内されると
亮太と婚約者が待っていた。

2人の姿を見ると、
彼女はすぐに立ち上がり
『初めまして!カオリです!
 お会いできるのを楽しみにしてました』
とハキハキと挨拶した。
きょうこの勝手な想像とは違い、
背も高く細身のきれいな子だった。


雅樹ときょうこは
その場で
それぞれ名乗り、
とりあえずな挨拶を済ませる。

さすが名店、
絶妙なタイミングで
和のコース料理が運ばれてくる。

きょうこは全集中で料理を味わい、
時々、彼女・カオリを観察した。


言葉少ないきょうこの代わりに
雅樹はよく喋った。

雅樹の問いかけにも
カオリは澱むことなく答える。
笑いも誘い、場を盛り上げた。

そして
どうやら
弱点は料理が出来ないことだけらしいことは
確認できた。


きょうこは相槌を打ちながら
時々、引き攣った笑いを浮かべて
3人の話を聞いた。


なによりも驚いたのが
亮太が
頼りがいのある男を演じている
(のか、演技ではないのか?)ことだ。


きょうこは
とにかく早く
時間が経つことを願うのだった。