宋の家を静かに出たそらは、
自宅に戻らず
そのまま1人で撮影所に入った。

誰もいない社長室のセットのソファで
台詞の暗記に集中していたが。。。



寝てしまったようだ。
ぼんやりと目を覚ます。
自分の体に毛布が掛けられている。

『ここどこ』


独り言に誰かが答える。


『風邪引くぞ』
社長の椅子に座っていたのは李だった。

『政宰‥!』

『早めに来てゆっくりしようと思ったら、
 先客がいたニヤリ

毛布をかけてくれたのは李で、
礼を言う代わりに
お腹が鳴る。

『朝飯も食わせずに仕事に送りだしたのか、アイツは』

『そんな人じゃないよ。
 私が食べずに出てきたの^^;』

『(撮影所の)前の店で良かったら、おごるよ』

『付き人さんに何か買ってきて貰うから
 いいわよ』

『撮影に影響が出たら、俺が困るんだ。来いよ』

椅子から立ち上がり
外に出て行く李。
そらは急いで後を追った。


朝粥を頬張るそらを、目を細めて見つめる李。
『ここのは、うまいだろ?』

『うん。政宰は食べないの?』

『俺は朝の電話でフラれた後、
 なんの味もしない朝飯を食べたよ』
笑うとエクボが出来る李を懐かしい目でそらは見た。

そらもつられて微笑む。

『どんなに苦労させても傍においておくべきだった。俺は今でもお前を愛している』

『私も愛してるわ。でも、もう昔ほどではないの』

『ほどではない、か(笑)
 アイツとはうまくいきそうか?』

『‥うん』そらはニッコリと笑った。
宋と別れてきたことは言えない。


『お前が傷ついて、
 俺のところに帰ってくるのを期待を込めて待つ』

『私はもう傷つかないし、
 期待には応えられないわよ?』

『それでもいい。ずっと見守りたい』






店に知った顔が何人か入ってくる。

ちょうどそらが食事を終えた。
『ごちそうさまでした』


『そろそろ、ちょうどリハーサル行くか』

『はい』