リサは、清潭洞のカフェにいた。
約束の1時間前に来て、
スマホでSNSの更新をしている。
今夜はフィギュアスケートの世界大会の中継があり、
久しぶりにリサの番組が休みだ。
仕事帰りのそらと待ち合わせして、
映画とショッピングに出かける予定になっている。
そらの部屋に泊まるつもりで着替えも持ってきた。
最近はそらに会う時、
宋が一緒に来ることもたまにある。
彼女たちは付き合っているようだが、詳しくは聞いていない。
蘇とは一度も連絡を取らないままに数週間経った。
蘇の様子は、業界にいると自然に耳に入ってくる。
宋はリサに気を遣ってか、
蘇の話題を口にすることは無かった。
一方、ビニはドラマの撮影が忙しくなっているようだ。時々メールが送られてくるが、他愛もない内容だ。
最近は共演女優との息がピッタリの様子で、
恋の噂もささやかれ始めた。
ビニとは大勢いる友人の一人として、これからも付き合っていくつもりだ。
そらがカフェのガラスの向こうから手招きをしている。
リサはカフェを出た。
『お疲れ』
『待った?』
『全然。ここで用を一つ、済ませたわ』
『良かった♡
今夜ね、予定を変更したいんだけど』
そらが、リサの着替えの入ったバッグをリサの手から取る。
『いいよ。どう変更?』
『あのね‥承憲のおうち!』
『行きたい!』とリサは即答した。
『良かった♡じゃあ、今夜はパーティーだから、買い物行こう』
『食材とかね?』
『そんなのはケータリングで大丈夫なの』
『私と承憲は買ってあるから、あとはリサが用意するだけ』
そらはタクシーを止めて、
2人は乗り込む。
『私は何を買えばいいの?』
『志燮の誕プレ』
『志燮の?』
『そうよ。承憲ちでお祝いするの』
『ちょ、ちょっと無理』リサは拒否した。
『ダメよ!行くって言ってあるの。
承憲が志燮にもリサが行くこと、話してるはずよ?手ぶらじゃだめでしょ?百貨店、行きましょねっ。あ、そうだ。ケーキも受け取りにいかなきゃだったわ』