夢の中、
リサはインターホンの音を聞いた気がした。


『はい』
ビニは、リサと付き合っていた頃にリサの家に泊まった時のようにインターホンの前で応対した。

(あの、、、リサさんの部屋ですよね)

『誰ですか?』

ビニは玄関まで行き、ドアを少し開けて外を確認した。
見上げると、見覚えある男が立っている。

『あ、おはようございます。
 リサですね?ちょっと待っててください』

ビニは部屋に戻り、リサの寝室の前に立った。

『リサ?蘇先輩が来てる。入ってもらう?』



リサはベッドから飛び起き、寝室を出た。

『なんで勝手に出るのよ?!信じられない!』

『ごめん、つい。
 ストーカー対策でいつも俺が出ていただろ?
 またか、と思って』

『仕方ないわ。。ビニにも
彼にも何も話しておかなかった私が悪い。
今、彼と付き合ってるの。。。って言うか。
昨日始まったばかりなのよ。
なのに、ここにビニが、、、

何も無いって言っても信じてもらえるかな、、

無理でしょ?!

いきなり破局?!

アリエナイ。。』

リサはパニック状態で喚く。


『リサにとって、最後の恋愛になるんだね?』
ビニは、リサの背中をさすって
落ち着かせる。


『うん、そうなったらいいと思ってた』

『わかった。
 リビングで待っていてもらうから、着替えて出てこいよ。
 そして、ちゃんと話し合って』
初めてビニが男らしく見えたリサ。

『私が行くまで、余計なことは絶対に言わないでよ?』

『わかってるって』




着替えを済ませたリサは
呼吸を整え、寝室を出てきた。

ソファに蘇が座っていた。

ビニはカウンターテーブルの脚の長い椅子に腰掛けている。

おはよう』リサは小さい声で挨拶した。

返事は無い。

『いま、コーヒー淹れるね』


『あ!俺がするよ』
ビニはやっと自分の居場所をキッチンに見つける。

リサは蘇の向かい側のフローリングに正座して、
深呼吸した。

蘇の顔には『怒』と『哀』の表情が混ざって出ている。

『あの、、、ビニとはね』

『リサの常識って、こういうの?』
リサの言葉を遮った、蘇。

『って、どういう?』

『誰でも家に呼んだり泊まらせたり』

『普段からそうしてるんじゃないわよ。
 理由を聞いてよ』

『言い訳だろ?聞かなくてもいい』



ビニがコーヒーカップを乗せたトレイをテーブルに乱暴に置いた。
『ひどいですよ、先輩!』

そういうと、佳子の隣で胡座をかく。
『家の鍵を失くして、行くところが無かった俺を泊めてくれただけなんです。僕はそのソファで寝てました』
と、蘇の座るソファを指差した。

『誰が証明するんだ?』蘇の心は動かない。

『ビニとは昔、付き合ってたの。もう過去の話。今は貴方のことを大切に思ってるわ』

『口ではなんとでも言える。俺は自分の目で見たものだけを信じる』
蘇の言葉に、リサはうなだれた。


『あの、、先輩』


『何も知らなかった俺の気持ちがわかるか?』