〜釜山〜

夜が明ける頃、
そらは眠っている宋の肩を揺らした。
『承憲、承憲』

『もう食えない。。。』
枕に顔をうずめていた宋の返事だ。

『なんの夢、見てんのよガーン 
 出て行くなら今のうちだよ』


『出てく?俺が?堂々とするって決めただろ?』
枕から顔を離した宋は、きっぱりと言った。

『でも、今なら外に人はいないわ。
 騒ぎにならなくて済むから、ね?ね?』

『そんなに困る?騒ぎが?』宋は完全に目覚めた。

『今まで騒がれたことがないから』
そらが首を横にふる。


『悪い事ばかりじゃないだろ?
 ドラマの視聴率も上がる‥』
心にもないことを言う宋。


『そんなことに利用したくないわ』

宋は起き上がった。
『わかってる‥
 俺とのことを
 元彼に知られるのが嫌なんだよな?』

『‥』
そらは答えられなかった。

『俺たちはもう付き合ってる。
 この機会にそらも、相手も、
 気持ちにケジメをつけるべきだ。
 もう相手に会わないって約束できるよな?』


しばらく考えて、そらは口を開いた。

『それは、仕事以外ってこと?』
的外れな返答だとは思うけど、
それが一番気がかりなことだ。


宋は驚く。
『同業者なのか?』

『うん。言ってなかったけど』

『ま、まあ‥普通に考えたらそうだよな。
 そいつが
 出ていない仕事を選べ‥とまでも言えない。

 じゃあ仕事以外で、会わない』

宋は本当は一緒に仕事をするな、と言いたいし
相手は誰なのかも聞きたいくらいだったが、
譲歩した。


『はい。会いません』

『今日から俺がそらを守っていく』

『うん』

『マスコミにも俺たちのことが
 伝わるかどうかもわからない』
 
『そうよね』そらは頷いた。

『寝ろよ』

『うん、寝る』





どれだけ眠ったのか、
ドアが閉まる音で宋が目覚める。
そらが部屋に入ってきた音だった。

『どこ行ってた?』

そらが持っていた白い袋を持ち上げて見せる。

『下のコンビニで朝食を買ってきたよ。
 さすがに
 朝から2人分のルームサービスなんて頼めないでしょ?(笑)』

『俺は全然構わないのに』

『これ済ませたら、撮影行くね。
 承憲はどうする?』


『この部屋で時間つぶして、昼過ぎの飛行機でSeoulに帰るよ。夜、撮影だから』


『そっか、わざわざ来てくれて
 ありがとね』

『仕事に対する情熱は復活した?
 李先輩に対抗できる?』

『うん!きっといい作品が出来る』

『よかったウインク