スマホで即席家庭教師
受験生にとり大事な夏がやってきた。マナボ(東京・文京)は自習中の中高生らがスマートフォン(スマホ)を使ってインターネット経由で講師に質問できるシステムを開発した。2012年に起業し、社長を務める三橋克仁(26)は「意欲のある子、伸びる子が、自ら伸びる機会を得られる教育システムづくりに貢献したい」と意気込む。
□ □
7月半ば、ベネッセコーポレーションの進研ゼミの大学受験生向け講座などで3ヶ月限定のオプションサービス「スマホ家庭教師」が始まる。
受験生は夏休みに自習をしていてわからない問題が出てきたら、スマホのカメラで撮影してネットに投稿。登録している講師役の大学生らのうち解答できる人が応じると"即席授業"が始まる。音声だけでなく、講師役の端末で図式などに書き込んだ情報は質問者の端末画面にも反映される。「鉄は熱いうちに打て」 --。おのずと勉強の進度もアップする。
これを動かすのがマナボのシステム「mana.bo」だ。マナボは塾や通信教育会社などに授業や講座を補完するサービスとしてシステムを提供する。塾から手数料などの収入を得る。
首都圏を中心に年初から本格的に始めたばかりの事業だが、「ベネッセとの今夏のプロジェクトが成功すれば、来年度から恒常的なサービスとして組み込んでもらうチャンスもある」と期待する。今後は地方塾などへの営業も強化。将来は、日本と同様に教育熱が高いアジア諸国での事業化も見据える。
三橋の企業の原点は大きく2つある。1つは自らが塾講師をしていた時代の歯がゆさが残る原体験だ。「先生、この問題教えて」--。東大入学後、塾講師としてアルバイトをしていた三橋に、受験生から電話やメールが寄せられることが珍しくなかった。深夜でも容赦ない。
夜遅くまで勉強する受験生やその親を思うと指導に熱がこもる。しかし数学や物理を限られた手段で説明するのは容易ではなかった。「いつでも、的確に教えてあげられる環境をつくりたい」。プログラミングを得意とする三橋はIT(情報技術)を使えばできるかもしれないと考えた。
□ □
もう一つは雑草魂だ。冷静な語り口と温和な表情を崩さない三橋だが、「"温室栽培組"には負けたくない」という強い情熱と反骨心を秘める。画家で自営業の父を見て育った。「幼少時から何もかも満たされた家庭ではなかった」と振り返る。今秋に東大の大学院を終了予定の三橋は、普通に就職することも考えたが、「教育分野のイノベーションを起こせるのは自分しかいない」と吹っ切った。
三橋を支援する教育関連の企業が東大・本郷キャンパス付近のビルに構える事務所のスペースを間借りしてきたが、近く東京港区のビルの一画に本格的にオフィスを構える予定だ。創業から5年後の17年の株式公開を目指す。
プログラミングの知識は豊富だが、「事業規模にあわせて会社を運営するバランス感覚など、経営者として、自ら経験し成長してかなければいけない」と三橋。長い挑戦は始まったばかりだ。
=敬称略
(岡森章男)
みはし・かつひと 2010年東京大学工学部を卒業、同大大学院工学系研究科に。1年休学してIT企業でインターンを経験した後に復学、12年マナボ設立。今秋に大学院を修了する見込み。東京都出身。
受験生にとり大事な夏がやってきた。マナボ(東京・文京)は自習中の中高生らがスマートフォン(スマホ)を使ってインターネット経由で講師に質問できるシステムを開発した。2012年に起業し、社長を務める三橋克仁(26)は「意欲のある子、伸びる子が、自ら伸びる機会を得られる教育システムづくりに貢献したい」と意気込む。
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7月半ば、ベネッセコーポレーションの進研ゼミの大学受験生向け講座などで3ヶ月限定のオプションサービス「スマホ家庭教師」が始まる。
受験生は夏休みに自習をしていてわからない問題が出てきたら、スマホのカメラで撮影してネットに投稿。登録している講師役の大学生らのうち解答できる人が応じると"即席授業"が始まる。音声だけでなく、講師役の端末で図式などに書き込んだ情報は質問者の端末画面にも反映される。「鉄は熱いうちに打て」 --。おのずと勉強の進度もアップする。
これを動かすのがマナボのシステム「mana.bo」だ。マナボは塾や通信教育会社などに授業や講座を補完するサービスとしてシステムを提供する。塾から手数料などの収入を得る。
首都圏を中心に年初から本格的に始めたばかりの事業だが、「ベネッセとの今夏のプロジェクトが成功すれば、来年度から恒常的なサービスとして組み込んでもらうチャンスもある」と期待する。今後は地方塾などへの営業も強化。将来は、日本と同様に教育熱が高いアジア諸国での事業化も見据える。
三橋の企業の原点は大きく2つある。1つは自らが塾講師をしていた時代の歯がゆさが残る原体験だ。「先生、この問題教えて」--。東大入学後、塾講師としてアルバイトをしていた三橋に、受験生から電話やメールが寄せられることが珍しくなかった。深夜でも容赦ない。
夜遅くまで勉強する受験生やその親を思うと指導に熱がこもる。しかし数学や物理を限られた手段で説明するのは容易ではなかった。「いつでも、的確に教えてあげられる環境をつくりたい」。プログラミングを得意とする三橋はIT(情報技術)を使えばできるかもしれないと考えた。
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もう一つは雑草魂だ。冷静な語り口と温和な表情を崩さない三橋だが、「"温室栽培組"には負けたくない」という強い情熱と反骨心を秘める。画家で自営業の父を見て育った。「幼少時から何もかも満たされた家庭ではなかった」と振り返る。今秋に東大の大学院を終了予定の三橋は、普通に就職することも考えたが、「教育分野のイノベーションを起こせるのは自分しかいない」と吹っ切った。
三橋を支援する教育関連の企業が東大・本郷キャンパス付近のビルに構える事務所のスペースを間借りしてきたが、近く東京港区のビルの一画に本格的にオフィスを構える予定だ。創業から5年後の17年の株式公開を目指す。
プログラミングの知識は豊富だが、「事業規模にあわせて会社を運営するバランス感覚など、経営者として、自ら経験し成長してかなければいけない」と三橋。長い挑戦は始まったばかりだ。
=敬称略
(岡森章男)
みはし・かつひと 2010年東京大学工学部を卒業、同大大学院工学系研究科に。1年休学してIT企業でインターンを経験した後に復学、12年マナボ設立。今秋に大学院を修了する見込み。東京都出身。