12月2日(土) 横浜能楽堂

狂言 『寝音曲』 (大蔵流 山本東次郎家)

 シテ(太郎冠者)山本則重 アド(主)山本則秀

(休憩)

能 『鷺』 (観世流 銕仙会)

 シテ(鷺)大槻文蔵 ツレ(主)観世銕之丞 ワキ(蔵人)福王茂十郎

 ワキツレ(大臣)福王和幸 アイ(官人)山本泰太郎

 笛:杉市和 小鼓:大倉源次郎 大鼓:國川純 太鼓:小寺真佐人

 地頭:浅井文義

 

横浜能楽堂が、年内で休館に入る最後の舞台。「中締め」特別公演の5回目、「珠玉の能・狂言」。

ワタクシにとっても長年親しんできて、能楽の中心だった横浜能楽堂とも、しばしのお別れ。

耐震構造等の工事と言うが、座席を、ずらして配置し直して欲しいのだ。

この日も、前の座席の方の頭が邪魔になって、半分も見えない。取り分けて正面席の良い席に座ると、前が邪魔になる。折角なのに。

いつだったか、知り合いの職員に座席をずらす工事も序でにやって欲しいと言ったら、即刻『却下』された。予算がないと。

それでも、もう少し、そうですねえ、伝えてみるけど、予算がないから難しいかも、位のことは言って欲しかった。敢然と却下されて、我がホームと思っていたのに、残念。失望。

正面席が、前の人で殆ど見えないという苦情は、結構聞いているんだけど。

 

狂言『寝音曲』。開催告知の当時は、シテ太郎冠者は山本則俊さんだった。ご逝去にともない変更と、HPでも告知があった。

則俊さんが十八番にしていた曲だけに、則俊さんシテのも拝見したことがあったので、どうしても比較してしまう。

シテ太郎冠者が、膝枕で謡うときに、起き上がると声が擦れ、膝枕になると良い声で謡える、それが段々逆になってしまう、ということなのだけど、その声の変化が、則俊さんはゆっくりとグラデーションし、段々と変化していくが、今回の則重さんは、ブチッと変化してしまうように聞こえる。

難しいし、則俊さんを期待しても行けないんだけど、ね。

やはり、希有の役者だったなあ、と追悼。

 

能『鷺』は初めて。だけど、かつてかなり研究した形跡が残っていたのは、2021年5月29日に、国立能楽堂で、野村四郎師の『鷺』を観たいと思っていて、準備したからだった。

実際には、その日に、横浜能楽堂で「東次郎家伝12番・番外編」が催されて、悩んだ末に、東次郎家伝12番を選択したのだった。家伝12番は、コロナのために本番の12番目が中止になってしまったが、でもとにかく12番やり通そうということで、番外編になったもので、全番観てきていたワタクシとしてはこの日の横浜能楽堂を優先したのだった。

今から思えば、四郎先生の『鷺』も見応えがあったろうと、まもなく他界されてしまったのだから、そっちを拝見しておけば良かったか、とも思うが、今となっては仕方なし。どっちも拝見したかった。

 

山本泰太郎さんの登場は、ホントに美しい。

銕之丞先生、案外小柄でした。輿ヒキの邪魔にはまったくならない。

 

ストーリーは単純。神泉苑で夕涼みする皇帝。鷺を観て捕まえるように伝えるが、逃げてしまう。勅諚である、というと、鷺も恐れ入って大人しくなって、喜びの舞をして、去って行く。

その鷺の舞、「鷺乱れ」という特殊な舞が中心。

足を前に振り出すような型、拍も鷺が足を落とすのだから音を立てない。抜き足というのか。

真っ白な装束で、鷺の冠を付けて、優雅に、品格を持って美しく舞う。

大槻文藏師、81歳。素晴らしい。

難点を言うと、鷺のカムリモノが、バネが効きすぎて跳ねるようになってしまい過ぎていた。目障りな程度。

それ以外は、あの御年で、あの優雅な、ゆったり舞を、ブレずに舞えるなんて素晴らしい。ワレも後10年、仕舞お稽古を続けねばならぬと、密かに決意。

確かに、人間国宝の価値が備わっている。

 

横浜能楽堂。今月中で休館だけど、あと2回第2舞台でお稽古して、年末には、第2舞台で発表会。それで、ホントにしばらくのお別れ。2年半は長い気がする。

残念だけど、ちゃんと改修工事してね、待ってるよ。