11月19日(日) 梅若能楽学院会館

能 『山姥』・雪月花之舞

 シテ(山女 山姥)梅若紀彰 ツレ(百ま山姥)鷲尾雄紀 ワキ(従者)福王和幸

 アイ(境川ノ里人)中村修一

 笛:栗林祐輔 小鼓:田邊恭資 大鼓:亀井広忠 太鼓:大川典良

 地頭:山崎正道

(休憩)

狂言 『謀生種』 (和泉流 野村万作の会)

 シテ(伯父)野村万作 アド(甥)内藤連

連吟 『葛城』

 シテ:富田雅子 ワキ:三吉徹子

連吟 『蝉丸』

 シテ:梅若紀彰 ツレ:角当直隆 地謡:梅若英寿

(休憩)

能 『木曽』・願書

 シテ(太夫坊覚明)小田切康陽 ツレ(木曽義仲)松山隆之 ツレ(池田次郎)松山隆雄

 ツレ(木曽郎党)土田英貴、外2名

 笛:一噌隆之 小鼓:曽和正博 大鼓:柿原弘和 地頭:角当行雄

 

楽しみにしていた、梅若会別会。何しろ、紀彰師が、大曲『山姥』を、雪月花之舞の小書き付きで、シテを勤めるのだ。

別会は、午前11時から開始という早さなのだけど、気がせいて、更に早く行ってしまう。

朝は寒い。

 

能『山姥』。原則として5番目の鬼能なのだけど、雪月花之舞の小書きが付くと、初番めともなるらしい。神能扱いなのだ。

だから、この日の初番で演じられる。

1時間50分なのだ。長いのだ。ワタクシは、梅若謡本を熟読し、持っていって、これを身ながら拝見。

2回目で、初回は、同じく梅若会の山中迓晶さんが、シテだったが、雪月花之舞の小書き付きではない。2022年3月の別会で。ブログによると小書きは何も付いていない。

ストーリーは、書かない。読んでください。

 

プログラムにあった後見二人が、何かしらの理由で欠席で、地謡から2人、前回シテを勤めた山中迓晶さんと、梅若英寿さんが後見に回り、地謡が6名になってしまう。英寿さんは、お勉強でしょうか。真剣に後見座から観ていた。

やはり、地謡6名では迫力に欠ける。

ツレ百ま山姥役は、まだまだ若い鷲尾雄紀さん。関西の梅若会かな。若さ溢れた良い声で、なかなかのもの。

 

前場は、シテ紀彰師が、幕内から「のうのう」と呼びかけると、さすがに緊張感がます。

その後、前シテが、延々と謡うのだが、この詞章が難しく、謡本を見ながらでなくては、眠くなるだろうし、紀彰師も暗記に苦労されたことだろう。

後場になって、シテが「山姥」の恐ろしげな面を付けて、堂々と登場。舞が続く。

舞の中で、舞台の正先に出てきて、じっと観られる感じがすると、怖さでゾクッとする。

一方、雪月花之舞の小書きに従って、四季折々の山の景色を謡い、舞っていく。美しい詞章と舞だが、凄みもある。

 

イメージ的には、シテの出番が多くて、シテの奮闘と力量が必要な曲と小書き。

全110分の内、紀彰師シテの謡や舞が、かなりの割合を示す。

シテが、ホントに中心の曲で、ゾクゾクとした素晴らしさ。

しかし、能というのは、シテが1人で完成するわけではない。シテの力量に相応しい、地謡や、囃子が必要。

常のワキの位置に、ツレがいて、ワキは、正面を向いていて、ただじっとしているだけなのだけど、いつのは見えないワキの表情が見えてしまって、良かったのか悪かったのか。

今回が悪かったというのではないのだけど、シテの力量に応じて演じて行けていたか。

 

紀彰先生には、ホントにお疲れ様でした、とお伝えしたい。100年お稽古しても、絶対に出来ない能でした。

拝見できるのも、今後あるかしら。

2回か3回詞章を間違えたけど、後見の山中さん付けてくれて、事なきなり。

あの長時間の舞と謡。常人で務まるものではない。完璧に覚えることなど出来るのか。

最後橋掛かりを下がっていく後シテ山姥。欄干に足をかけたのは、工夫かしら。

 

狂言『謀生種』。大きな嘘をつくという伯父と、嘘合戦をしたい甥の話。休憩を挟みつつも、『山姥』の興奮冷めやらぬ中で、万作さん、きっちりと。

 

連吟2曲。一曲目の『葛城』は、女流総出演。

二曲目の『蝉丸』。当日発表で、シテ役が梅若楼雪師から紀彰師に変更。元々そうだろうとは思っていたけど、紀彰先生、お疲れの所、ご苦労様です。

近い謡いだし、来週、大槻能楽堂で『蝉丸』の逆髪かな、を勤められるので、問題なく、いつものお声で。

英寿君の声が、初めて聞こえた。地謡の末席にいたのを聞いたことはあったのだけど、いままで、声が聞こえなかったのです。高めの、なかなか良い声で。が、紀彰師の導きを辿って謡っていた。

まだ大学生。頑張れ~。

 

能『木曽』。初めて拝見。木曽義仲が、倶利伽羅峠の戦をする前に、地の八幡宮に勝利祈願の「願書」を出す。その「願書」の起草者と読み手が、シテというわけ。

従って、願書の読み上げが、見どころ、聞き所なのだけど、大切なところで間違えてしまい、残念。

ツレの池田次郎、松山隆雄さんというベテランなのだけど、詞章を間違えてしまう。残念というか、どうして、と。お年なのかな。

この曲の後見にも、紀彰師が登場。ああ、お疲れなのに、連吟『蝉丸』の交替もあり、最後は、後見も。

 

全体的に、紀彰先生、お疲れ様でした。ホントに。

大曲を仕上げた上で、そのほかも。

外の交代要員は、梅若にはいないのかしら。

 

大変なお能を観てしまった。記念、記憶、記録。