11月15日(水) 町田市民ホール

原案:水上勉

監督・脚本:中江裕司

出演:小説家ツトム・沢田研二 編集者真知子・松たか子 その他

 

水上勉著「土を食らう日々」は、ワタクシの愛読書の一つで、2013年60歳の時に共同事務所から独立して個人事務所を創設した際、まだガランとしていた本棚の飾りにもなるかと、家からこの本を持ち込んでもいた。法律の専門書ばかりでは、何だかねえ、ということ。

 

所有している「土を食らう日々~わが精進十二ヶ月」は、1978年(昭和53年)の著作で、私が買ったのは、購入日のメモがないので正確ではないが、1991年7月の第十二刷なので、それ以降になる。

 

映画「土を食らう十二ヶ月」は、この「土を食らう日々」の映画化、と思い込んでいて、劇場公開した2022年11月にも、観ようとしたのだけど、なんとも時間の都合が付かずに断念していたところ、「町田演劇鑑賞会」という得体の知れない団体が、市民ホールで上映すると、どこかで知り、当日券1200円、前売り券1000円なので、前売り券を求めてたまたま町田に行った際に、チケットを購入した。

会場の町田市民ホールに前売り券があるはずと信じて疑わず、時間をかけて歩いて行ったが、町田市民ホールでは扱っておらず、また町田駅方面にエッチラ戻って、チケット取扱い所になっている書店「久美堂」で購入できた。

 

結論から言うと、映画化と思って観たのが間違い、失敗作に近いと思った。

原作ではなくて、原案と書いてあり、題名も微妙に違っていたことにも後で気付く。

しかし、水上勉の著作から製作したようなことを宣伝していたし、間違えてしまうのも仕方ないし、わざと混乱させたのではなかろうかとすら邪推したくなる。

 

水上勉の他界は2004年であったので、2022年製作時には、ご遺族か何かの許可を得たモノであろうけど、内容はかなり違う。

 

本書の後書き。「約一カ年軽井沢の山荘にこもって、畑をつくり、そこで穫れたものを中心に、私が少年時から、禅寺でおぼえた精進料理をつくってみて、それにいわでものことを云いまぶして、料理読本というにしては不調法で、文化論というには非文化的で、人間論というにしては、いかにも浅底の、とにかく体をなさない妙な文章になりつつあるのを承知しながら、おだてられるままに書きつないできたもの」とある。

 

ワタクシが好きなのは、禅風の料理方法、食材の使い方、ものの見方であって、ある意味で本当のグルメ本なのだ。

 

それを小説家を主人公にしたり、畑と相談するところなどは用いたり、心筋梗塞で3分も2が壊死したことの真実など、原作の「風」を装っているが、昔死んだ妻の母親の孤独死と葬儀、通夜ぶるまい料理、その弟夫婦との不思議、編集者との恋に似たモノとかのエピソードを中心にしてしまった、改ざん作だ。

失敗作だろう。

というか、水上勉の原作愛読者としては、困ったモンだ映画にしてしまった。

 

ここで、町田演劇鑑賞会、会場に行ってみると、新婦人なのだった。

新日本婦人の会。日本共産党系の婦人団体。選挙では大活躍する部隊。

な~るほど。水上勉氏は、心筋梗塞経験者の関係で、不破哲三氏(当時は委員長かな)と親しく家族交流をしていて、そんなことで、共産党関係者からは、支援者が多いのだ。

ワタクシは、元共産党員ではあるけど、大嫌いな団体。

そんなことで、町田演劇鑑賞会が取り上げる作品映画に、本作が選ばれたのだろう。

 

不快な気分になったけど、映画そのモノも感激とはほど遠かったが、松たか子は好きだし、沢田研二とも若干の接点があったので、鑑賞自体は無駄だったということではない。

しかし、騙された感が強いなあ。