11月4日(土) 横浜能楽堂

解説 山中玲子(法政大学能楽研究所教授)

仕舞 『楊貴妃』 梅若万三郎

   『白楽天』 藤波重彦

   『鞍馬天狗』 梅若紀彰

      地頭:伊藤嘉章

独吟 『鵜飼』・鵜之段 宝生常三

笛 超絶技巧必殺の奥義

   笛:一噌幸弘 タブラ:吉見征樹

(休憩)

能 『張良』 (観世流 梅若研能会)

 シテ(老人 黃石公)加藤眞悟 ツレ(龍神)長谷川晴彦

 ワキ(張良)梅村昌功 ワキ(張良の従者)松本薫

 笛:一噌幸弘 小鼓:田邊恭資 大鼓:大倉慶乃助 太鼓:梶谷英樹

 地頭:梅若紀彰

 

あまり知られていない、能の会だったが、それでも1階の3分の1くらいは埋まる。

前回のお稽古の時に、紀彰先生から、チラと聞いて、11月1日のシンポの時にもちょっと聞いて、調べたら、こういう能の会が横浜能楽堂で開催されると聞き、急だったけど、お願いしてチケットゲット。

 

解説の山中玲子教授、どう見てもド素人が来る会ではないのに、初めて能を見た方、という感じで話す。ふ~ん、法政大学能楽研究所の教授ねえ。ワタクシと、ほぼ同時期に東大にいたことになるが。

 

仕舞3曲。いずれもベテランの能楽師。キチンとした仕舞でした。

梅若万三郎。3世梅若万三郎。かなりお歳だけど、しっかり、きっちり舞っていらした。

紀彰師の『鞍馬天狗』。お稽古で仲間が習っていた曲。その時にもお手本を観ているので、型や道順はわかる。

「そもそも武略の誉れの道」から。

この前に、張良と黃石公の話が出てくるのですよ。中山玲子教授、今日のお仕舞いは、能の「張良」とは関係ないと解説しておられたけど、間違いですよ。

 

独吟は、ワキ方の宝生常三師。良いお声だ。ワキ方は、総じて謡が旨い。お一人で、朗々と。

 

笛の超絶技巧。今年の3月、「神奈川紅葉ガ丘まいらん」という企画でも、笛の超絶技巧を吹いていた。横笛にとどまらず、縦笛も。尺八、角笛。同時に3本の笛も吹く。息を吸いながら、長い時間吹くという技。

タブラというのは、北インドの太鼓のようなモノで、手で打つ。ジャズのセッションだね。良かった。

一噌幸弘さんは、能管にとどまらず、こういう演奏も好きなんだね。

 

能『張良』、初見。そういうお能があることすら知らなかった。

内容は、制作当時は極めて人口に膾炙していたという、漢の軍師張良と、それを授ける黃石公の逸話。わざと履を落として張良に拾わせて、志を試した上で、兵法の大事を伝授する。

『鞍馬天狗』を謡でも習ったときに、この逸話が登場して、なんのこっちゃと思っていたが、その当時は、よく知られていたんだねえ。有名な逸話を、能の題材とし、兵法の伝授という絡みで『鞍馬天狗』にも登場する。

この曲は、いつもは座ってばかりのワキ方が、激しく動き回り、急流の中に履を取りに入り、龍神とも戦う。その間、後シテの黃石公は、じっとしているという、両シテでも良いような曲。

ワキ方としては、秘曲口伝らしく、大変に重い扱いで、その動きから、能のワキ方の家に産まれたような方は若い内に舞うらしいが、国立能楽堂三役研修第1期生の梅村さんは、63歳でお披きとなったとのこと。

それで、この様な、能の会にしたわけだ。

 

開始から、緊張感が溢れる感じで、久しぶりに心地よい。

どうしてかなと思ったら、感想としては、地頭の力量ではないかと。お能は、シテ方は勿論大切なのだけど、地頭がしっかりとリードすると、全体がまとまって、この曲の場合は多いに盛り上がる。緊張感を持って盛り上がる。

紀彰師の地頭。いつものようにお声がよく聞こえていて、地謡の他のメンバーも謡いやすそう。

囃子方も全力で。

 

良かったです。お能は地頭もとても大切、重要。