9月22日(金) 国立能楽堂
狂言組
『末広かり』 (大蔵流 善竹家)
シテ(果報者)善竹十郎 アド(太郎冠者)善竹大二郎 アド(すっぱ)善竹忠重
笛:栗林祐輔 小鼓:田邊恭資 大鼓:亀井洋佑 太鼓:金春惣右衛門
(休憩)
『鬮罪人』 (和泉流 三宅右近家)
シテ(太郎冠者)三宅近成 アド(主)三宅右矩 アド(立衆)三宅右近
囃子方:前同
(休憩)
『獅子聟』 (大蔵流 山本東次郎家)
シテ(舅)山本東次郎 アド(聟)山本凜太郎 アド(太郎冠者)若松隆
アド(又六)山本則秀 地頭:山本泰太郎
囃子方:前同
40周年記念公演の4番目。今回は狂言組で、3家が演じる。
『末広かり』、『末広』と表記する方が多いようだけど、『末広かり』。
扇の末広かりを知らずに、田舎者の太郎冠者が京へ買いに出て、すっぱに騙されて、古傘を買わされる話。
プラス、囃子物で主人の機嫌を取る。すっぱに教えて貰ったモノ。
何度も観ているので、液晶パネルを英語にして見てみた。
紙とか、骨とか、柄とかのシャレですっぱに誤魔化されるのだけど、そのシャレが巧く英語で表現できない。当たり前。日本語のシャレを英語に出来ようはずがない。柄と絵。
すっぱをSwindler と訳していた。詐欺師。そうだけど、ちょっと違うよね。
更に、囃子の謡やシャレは、まったく英訳不能と思った。英語を見ていても、耳から聞こえてくる浮かれた調子やリズム、コトバの楽しさは伝わらない。
善竹十郎。1944年生まれ、81歳かな。最近、ご高齢の能楽師が気になるが、十郎はキチンと。ご立派。
『鬮罪人』、祇園祭の山鉾の作り方を巡る、出しゃばりの太郎冠者とその主との争い。鬮で太郎冠者が鬼を引き、主が罪人を引いてしまって、家来が主人を責める羽目になる。
主が頭の番なのだが、決して独裁せず、極めて民主的に、話し合いによって出し物を決めていく様が、今般の情勢に鑑みて、狂言の世界は素晴らしく民主的だ、と感慨ひとしお。
当日発表された配役の交替により、シテ太郎冠者が三宅右近から三宅近成へ、主たる立衆が三宅近成から右近へ。
そして、三宅右近が登場した初めて、やや呂律が回らず、聞き取れない部分があって、ビックリ。右近さん、1941年生まれ、83歳かな。いよいよかなと思ったが、後は台詞も所作もキチンとしてきて、杞憂であった。
最後は『獅子聟』、初めて拝見。かつてから東次郎家に伝わる秘曲で、途絶えていたが、現世東次郎が1972年に復曲したものらしい。
通常は聟がシテらしいが、今回は舅がシテ東次郎さん、聟がアドで孫の凜太郎さん。芸の継承だな。
婿入りの時の盃事、仕舞の披露に続いて、獅子舞を舞う。『石橋』の様な、歌舞伎の『連獅子』のような。しかも、長袴で。
超、難関だろう。凜太郎さん、くるっと飛んで廻って着座するとき、2回手をついてしまう。東次郎さんは、舅役だからだろうか、廻り飛びの型は出さなかったモノの、長袴で激しい動きをこなし、感服。膝が痛いのに。
東次郎先生、1937年生まれ、86歳かしら。頭が下がる。
ここ2日ほど、2021年1月からのテレビドラマ「俺の家の話」を見返していて、最近の梅若楼雪先生の役も見ていて、ベテランの域に達する名人の能楽師の有様に、思いを深くする。
この日は、昼絡みで、母の納骨があって、食事会でも酒を殆ど飲まずに来た。
何かと、考え深い、だが楽しくしっかりした芸の狂言組でした。(偉そーに書いているけど、ド素人ですから信じないよーに)