9月15日(金) 国立能楽堂

一調一声 『三井寺』

 謡:梅若楼雪 小鼓:大倉源次郎

狂言 『萩大名』 (和泉流 野村万蔵家)

 シテ(大名)野村萬 アド(太郎冠者)野村拳之介 アド(亭主)野村万蔵

(休憩)

能 『白田村』 (喜多流)

 シテ(童子 坂上田村麿)友枝昭世 ワキ(旅僧)宝生常三 アイ(門前ノ者)野村万禄

 笛:一噌幸弘 小鼓:曽和正博 大鼓:國川純 地頭:香川靖嗣

 面:前シテ「童子」 後シテ「天神」

 

国立能楽堂は、40年前の昭和58年(1993年)9月に開設されたから、今月は、その40周年の特別月間。素晴らしい公演が並ぶ。

 

第1回は、6日に行われた公演で、観世御宗家の『翁』で野村萬斎の『三番叟』、観世流大槻文藏の『清経』で地頭が梅若楼雪、野村万作の『栗焼』、金春流前御宗家金春安明の『山姥』という豪華ラインアップ。

8月9日のあぜくら会販売では、当然購入せんとトライするも、発売わずか10分で、やっと回線が繋がったと喜んだところですでに完売。残念無念。

 

9日の公演も、次期金剛流御宗家の『枕慈童』、狂言大蔵流宗家の『月見座頭』、宝生流御宗家の『船弁慶』と並んでいたが、これは、日本フィルの定期演奏会とダブっていたので、ハナから諦め。

 

で、第3回の今回は、やっと買えた。でも、いつもの中正面は買えずに、脇正面になっちゃった。

今回も人間国宝が4人も出演。

 

一調一声『三井寺』。一調とどこが違うか良くわからないが、とにかく、両名人の掛け合いに、期待は大々。

楼雪先生、いよいよ、切り戸口から歩いて舞台には入れず、椅子に座ったままで担がれて舞台に入って、椅子を擦って定位置へ。弟子の山崎正道さんがピタッと寄り添う。

お声や謡い方はピカイチのはずと思っていたが、あれあれ、謡で感激しない。詞章の間違いは無い訳じゃあ無いけど、声にハリがない、声が伸びない、声が小さい、節に情感が乗らない。清水寺から三井寺に移動するときの箇所だったのに。

源次郎先生、難しい特殊な手を打っていたけど、楼雪師に合わせようとするのか、うまく行かない。

ガッカリというか、悲しくなる。身体的な故障だけにとどまっていないようだ。

休憩時間の、ロビーでの会話も、出たのを見たときにダメだと思ったが、やっぱりダメだったね、等という会話が聞こえてくる。

 

狂言『萩大名』、10回目かな、野村萬師のは初めて。こちらは、90歳を超えても、動きも声も衰えず。却って円熟味。

アド太郎冠者は拳之介さん。万之丞は、後見で出ていた。拳之介さんはまだ固い。

前日の睡眠不足で、庭を愛でて失敗しそうになる箇所で、寝落ちしてしまった。ま、それだけ安心できていたということ。

太郎冠者が「恥をかかせるが良い」と声を出して話して、退場していく。成敗というか指導なのだね。こういう演出。

最後の「面目もない」という大名のセリフと落胆ぶり。これとマッチしていた。

 

能『白田村』。喜多流は、他流の「白式」という小書きを、名称レベルで変えているようだ。というか、喜多流で『田村』は『白田村』しかないのかな。

拝見回数はそんなに多くはないが、謡はしっかりと習ったし、ほぼ覚えているし、梅若とどこで節付けが異なるか、詞章が異なるかも分かって、楽しかった。

シテ友枝昭世さんの演出なのか、キリはもっとスピードを上げて迫力を持って演じた方が良かったかな、というイメージ。こちらの固定観念か。

むしろ重厚感を狙ったか。観音様の御利益を前面にしたかったか。

 

友枝昭世師人間国宝は、83歳か。楼雪先生は75歳か。単純に年齢比較は出来ないけど。現役の人間国宝の方々を見ると、楼雪先生、悲しくなります。心配です。

まだ、楼雪先生がご出演される能会がいくつかチケットを買ってある。直近では、今月17日の梅若定式能。『松風』の地頭予定だけど。