8月3日(木) 国立能楽堂
一調 『おかしき天狗』 (狂言方 山本東次郎家)
謡:山本則俊 太鼓:小寺真佐人
脇仕舞 『大蛇』 (ワキ方 下掛かり宝生流)
ワキ 宝生欣哉
仕舞 『柏崎』クセ (喜多流)
シテ 狩野了一
(休憩)
袴能 『鵺』 (観世流 銕仙家)
シテ(舟人 鵺)片山九郎右衛門 ワキ(旅僧)福王和幸 アイ(里人)若松隆
笛:竹市学 小鼓:鵜澤洋太郎 大鼓:安福光雄 太鼓:小寺真佐人
地頭:観世銕之丞
「◎素の魅力」という8月の特別企画。
すべての公演で、面や装束を着けずに、シテ方を含む主演者全員が、紋付き袴。
お能は、7月16日の『松山天狗』以来。チトあれこれあって、時間に縛られたくなかったので、チケットを取ってこなかった。
この日も、なかなか気力が湧かなかったんだけど、頑張って行きました。
結論は、気分転換になって良かったです。やはり、能楽が一番。
一調『おかしき天狗』は、初めて聴いた、
謡の山本則俊さん。かねてから体調が悪いと聞いていたし、現に、欠席交替された舞台も最近多かったから、この日も無理かなと思っていたら、則重さんを補助にして、登場していただいた。
則俊さんの謡は、以前から身体を上下に使って、力強く謡うのだったけど、さすがに正座も出来ず、身体を折り曲げてしまって、声のハリは全然。
が、登場していただいただけで、ワタクシは感激。ああ、どうしてもこの舞台を勤めたかったんだ。最後かも知れないお姿をしっかと拝見させて頂きました。どうしても、ご高齢の役者は、ね。いずれ来る道。
脇仕舞『大蛇』も初めて。ワキの宝生欣哉師は、先日人間国宝に指名されたばかり。まだ57歳の若手での人間国宝誕生。まだ正式決定ではないから、人間国宝との紹介はパンフにない。
脇仕舞は、シテ方仕舞とは違うらしいけど、殆ど分からない。
シテ方の仕舞『柏崎』クセも初めて。有名なクセらしいが。
ホントにゆったり、ゆっくりした、型を十二分に見せる舞。元々仕舞は面も装束も無しの紋付き袴姿なので、その点特別ではないのだけど、例の喜多流独特のサユウも含めて、キチンと、きちんと舞っていて、良かった。
一見素人でも出来そうな型の連続なのだけど、難しいのですよ。身体の芯がブレずに、腕の動きもキチンと決めて、あのようにゆったり舞うのは。
袴能『鵺』、能としては2度目。今回は、面・装束無し。
面がないということは、眼球の動きまで見えてしまうと言うこと。キョロキョロするとみっともない。
装束がないということは、足使いや腕使いが見え見えになってしまうこと。ホント、難しいと思う。いや、一見簡単だけど、他人にお見せする舞台としては、かなりの力量がないと出来ない。型が決まらないと。
片山九郎右衛門、素晴らしい。もはや人間国宝レベル。京都片山家の当主だし、御尊父の先代九郎右衛門、片山幽雪師は人間国宝だったし。しっかりと受け継がれている。
巧い。格好いい。
『鵺』って、退治した源頼政の武勇談だけだと誤解していた。
良く詞章を読んでみると、射殺された化け物=鵺の側からも描かれているんだね。勝者の頼政は、ご褒美の剣も頂き、出世していくが、一方、化生のものではあるが鵺は、射殺されて、うつほ舟に放り込まれて淀川に流されてしまう。
その鵺の弔いなのだ。法華経では、この様なモノでも、死すれば弔われるべきなのだ。成仏は出来ないけどね。
草木国土悉皆成仏。有情無情皆倶成仏道。
気分転換になりました。能楽中毒者。