6月16日(金)

at 常磐座

 文弥人形芝居 『国性爺合戦』

 出演者は、地元の人

at 正法寺

浄道場 正法寺住職 その他僧

講演 『平家の俊才・平経正』 藤沢周

演誦 平家琵琶 『祇園精舎』 高橋秀樹

能 『経政』 (観世流)

 シテ(平経政)松木千俊 ワキ(行慶僧都)村瀬慧

 笛:木内豊 小鼓:清水和音 大鼓:浮部博貴 地頭:松木崇俊

 

世阿弥が佐渡に配流されたことを偲ぶ、世阿弥の功績を讃える企画。

佐渡の「能を識る会」が中心となり、観光協会などの協力を得て、一連の企画になる。

 

講演した藤沢周さんが、我が紀彩の会の代表を務めていることもあって、皆さん一緒に行こうじゃないかという企画の初日。

 

昼過ぎのジェットフォイルで新潟を出立して、佐渡の両津上陸。

用意して頂いていたタクシーで、今夜のホテルにチェックインして、すぐに「常磐座」という、建物へ。

 

どうやら、文弥人形芝居の専門の芝居小屋で、今回の演目は『国性爺合戦』、浄瑠璃文楽ですね。近松門左衛門作。

ホンモノの文楽は、人形遣いが一体につき3人だけど、ここでは一人で一体の人形を扱う。右手で人形の右手、左手で人形の頭部。大変だろうなあ、重いだろうなあ。

出演した人形遣いは合計3人。持分を変えて、人形4体。三味線浄瑠璃は一人。奏でて、唸る。全部、高齢の女性。

名前だけは知っている演目で、大略しか理解できなかったけど、すべてお素人の役者が、重い人形を扱い、三味線を奏で歌うことに感動した。

 

お弁当を頂いてから、正法寺に移動。出演者の車で送って貰う。

 

住職が、道場を清める儀式を行う。御詠歌を詠うのは、あちこちから集まった地元の老婦人。後日、観光であちこち廻ると、お出でになってましたね、等と声をかけられて、びっくり。

 

藤沢さんの講演は、何年も共にお稽古しているけど、初拝聴。琵琶「青山」の話、敦盛の話、経政の話。

紀彩の会では、今年の1~2月に「経政」の素謡を紀彰先生から教えて頂いたばかりだったけど、お稽古の時に、今度のお話を聞いていれば、もっと上手に謡えたのに、等と。

 

かなり感動したのが琵琶の演奏と、語りというか謡というか。

高橋秀樹先生、良いお声。またなんと言っても奏でる琵琶の音に感動。琵琶演奏は何回か聴いたことがあるが、小さな会場で、間近に演奏して貰えて、マイクを通さない音ははじめて拝聴。これが素晴らしい。

『経政』の詞章に出てくる、第1から第4の弦の音の有様が、ホントに良くわかる。この音で、深夜、静かな夜に奏でられたら、間違いなく、うっとり、感動する。昔は、こういう風情だったんだ。

 

能『経政』、3回目だけど、素謡は習っていたし、キリの仕舞も仲間が習ったし、暗記は出来ていないまでも、併せて謡うことができる。

ろうそく能が、消え消えとなる経政の幽霊に相応しく、ぴったりの演目。

出演者中、シテとワキ、地頭、囃子方の小鼓は玄人だけど(笛もかな)、後は素人で、地に根付いたお能とはこういうもの。

シテやワキのプロは、さすがで、松木千俊先生など、素晴らしい演技でした。

 

佐渡には能舞台が沢山あるけど、ここはお寺の本堂に敷台を敷いての演能。見所の最前列と、能舞台が同じ高さで、まさしく目の前。これもこれなりに素晴らしい。

 

玄人、素人の出演者での打ち上げ宴会、「直会」と称していたけど、まあ懐かしの宴会が終演後にあって、こちらにも参加させていただいた。藤沢さんのご縁で。

そこで、松木さんなどから直接お話を伺うと、色々な工夫やら、演者の気持ちも教えて頂いて、酒を飲みながらだから遠慮なく質問などして、とても勉強になった上に、地に根付いた能会というのが、新鮮で、東京の立派な能楽堂で演ずるより、親しみが湧く。

今までのお能の拝見では味わえない状況で、お能鑑賞体験としても新鮮かつ感動的で、今までのお能拝見とは、まったく別次元の感動となった。

 

なんでも、佐渡は宝生流が主流なのだそうだけど、『能を識る会』の正法寺ろうそく能は観世流。

 

これは、一生忘れられない、感動の能会でした。