5月13日(土) 国立能楽堂

解説 『狂うこと舞うこと』 横山太郎

狂言 『貰聟』 (和泉流 狂言共同社)

 シテ(夫)井上松次郎 アド(舅)佐藤友彦 アド(妻)今枝郁雄

(休憩)

能 『班女』 (観世流 銕仙会)

 シテ(花子)浅井文義 ワキ(吉田少将)宝生常三(森常好あらため)

 アイ(野上の宿の長)野口隆行

 笛:藤田次郎 小鼓:清水こう祐 大鼓:白坂保行 地頭:馬野正基

 面:シテ「孫次郎」

 

解説の横山太郎さん、立教大学の教授で、1972年生まれ。能『班女』の解説を中心に行うのだけど、現代的な解説にしようと努力したか、エモいなどというコトバを使い、かつ、早口なので、爺には付いていけない。

聞き取れないから、眠くなる。学生さん相手ではないのですけど。

 

狂言『貰聟』、2回目かな。夫婦げんかの話で、酒に酔って出て行けと言われて、実家に帰る妻。今度こそは別れるという。取りなしの舅でも諦めて、翌朝迎えに来た夫にも隠すが、なんと、子どものことが気になって、実の親を裏切って、夫とともに帰ってしまう。夫と妻の態度の変化。振り回されて立場を失う舅。

最後の捨て台詞が、「来年は祭に呼ばない」。ふ~む。里の祭に呼ぶか呼ばないか、絶縁に近いものなのだろうか。

狂言共同社、ワタクシにはイマイチ合わず。佐藤友彦さんはとても上手だと思うのだけど。名古屋。

 

能『班女』、3回目だけど、やっと意味が解りかけてきたが、大変に難しい曲だ。

モチーフは、扇だ。

大体、「班女」という題名が良く解らなかった。これは、当時はよく知られていた”班しょうよ”の物語が下敷き。ここまでは知っていたが。

夏によく使う扇は、秋になると捨てられるので、秋に捨てられる女、というイメージなのだ。

そこから、遊女花子は、東国下りの途中で吉田少将と契りを交わし、扇を交換したのに、会いに来てくれず、他の客の相手をしなかったので、野上の宿を追い出され、都へ行く。吉田少将は東国から戻ってきたが、既に花子は追い出されてしまっている。そこで、吉田少将も都へ、糺すの森へ。

ここまでは大体ストーリーが見えるのだけど、ここから長~いクリ、サシ、クセ、中ノ舞で、班女こと花子の恋慕の情を語り、舞う。盛り上がらないし、詞章の意味が難しくて、付いて行くのに苦労する。

やっと吉田少将と、手持ちの扇を見せ合い交換することによって確認し合い、再会する。ハッピーエンドなのだが、難しい。

 

花子と吉田少将というと、能『隅田川』に繋がるか。狂言の『花子』にもあるいは繋がるか。

 

難しい能だ。でも、それを飽きさせずに引っ張るのは、今回のシテ浅井文義さんの力量。

あまり注目してこなかったシテ方だけど、記憶に止めよう。銕仙会所属の大阪メンバー。1949年生まれなので、73歳か。声も大きいし、動きもキチンと舞う。極初めに中入なので、ずっと出ずっぱりで体力と集中力がなければならぬ。

それでも乱れない、謡と舞。大阪の銕仙会を引っ張るか。良きかな。

 

ワキの森常好さんが、今回から(5月からか)宝生常三と改名。相変わらずのお声。

花子が「班女」と渾名されるのは、吉田少将と会う前から扇が好きだったからと言うワキ方と、今回のように、吉田少将と扇を取り交わしてから夢中になってしまって「班女」と渾名されたか、二つあるらしい。

この渾名が解らないと、なかなか、『班女』という曲名と、ストーリーが頭の中で繋がらないのでした。