5月3日(水・祝) 川崎市麻生市民館

解説 馬場あき子

狂言 『粟田口』(大藏流 山本東次郎家)

 シテ(大名)山本東次郎 アド(太郎冠者)山本凜太郎 アド(粟田口)山本則重

(休憩)

能 『殺生石』・女体

 シテ(里の女 野干)友枝昭世 ワキ(玄翁道人)宝生欣哉 アイ(能力)山本則秀

 小鼓:藤田貴寬 小鼓:森澤勇司 大鼓:大倉慶乃助 太鼓:梶谷英樹 地頭:長島茂

 面:前シテ「?」 後シテ「玉藻」とか言う新作らしい。

 

一昨年、去年に続いて3回連続で参加。

 

馬場あき子さんの解説。毎度毎度素晴らしい。能と狂言の演目について、ストーリーは示しつつ、注目すべき要所もキチンと押さえる。

これで、これから始まる狂言・能に対する期待が大きく膨らむ。

馬場あき子さん、今年は御年95歳になられたが、今回も約30分間、立ったまま、大したメモも見ずして、次から次へと正確な紹介と解説。殆ど言い淀まない。

なんと素晴らしい方だ。映画「幾春かけて老いゆかん」が、まもなく上映されるらしいが、近くで上映されることがあるのだろうか。必ず観に行く。

 

狂言『粟田口』、何度も。東次郎家のものは、2020年2月の東次郎家伝十二番以来。著書「狂言のことだま」にも触れられている作品で、なかなか意味深長なもの。その本のことも、ブログに書いてある。

今回の発見は、藤間の丞という名前かな。いままであまり意識していなかったけど、今回は十分聞き取れた。

疑いつつも否定できず、信頼の仕切れていない大名。いよいよ信用しようかという矢先に、最後に騙されたと解るのだけど、すぐには信じられず(信じたくなくて)、それでも気を取り直して、やるまいぞ、と追い込む。その間(ま)。顔つきの変化。

さすがの東次郎さん。

 

能『殺生石』は、なんと初めてらしい。様々な知識があったけど、観るのは初めて。

ストーリーは、玉藻の前が実は化生のもので、帝を悩ませるので、追放されて那須野原へ。追い込められて射殺されるけど、執心が岩石に残って、鳥や虫を殺す。そこに玄翁和尚が読誦して、執心を解かせ、悪事を止めるようになる。

今回「女体」という小書きで。喜多流と金剛流しかない小書きだそう。

殺生石が割れて出てくるのが、後シテ野干だけど、通常は男で、小飛出、赤頭、法被、半切り。それが、女体となって、白い煌めくような長絹に、朱長袴、面は特製らしい「玉藻」。狐眼に様につり上がった目。

これによって、極めて妖艶なイメージが膨らむ。長袴を履くシテ。歩きずらそう。

もうひとつ、特筆すべきはアイ狂言語りの、山本則秀さん。堂々としたわかりやすい声と語り口で、語る。アイ狂言は、能の中でも重要な欠くべからざる役割を持つとは、まさしくその見本。東次郎家は、アイ語りも大丈夫。

 

この企画は、素晴らしい企画。いつからある企画か解らないけど、3回連続で飽きないし、感動し、勉強になる。ますます能楽が好きになる。

馬場あき子さん95歳、山本東次郎86歳、友枝昭世83歳。まだまだ続いて欲しい。