4月27日(木) 国立能楽堂
復曲狂言 『鷺』 (大藏流 山本東次郎家)
シテ(太郎冠者)山本凜太郎 アド(主)山本東次郎
笛:一噌隆之
(休憩)
新作能 『夢浮橋』 (観世流 九皐会・梅若会・片山家)
(阿闍梨)片山九郎右衛門 (女 浮舟)味方玄 (匂宮)観世喜正
笛:一噌隆之 小鼓:大倉源次郎 大鼓:亀井広忠 地頭:山崎正道
面:阿闍梨「邯鄲男」(伝 徳若作) 浮舟「増」(銘うたたね 満茂作)
匂宮「若男」
◎新作・復曲再演の会
復曲狂言『鷺』は3回目。復曲自体はかなり前だけど、東次郎家では2019年7月「大典」で復曲し、2021年3月「山本会別会」で2度目、今回が3度目で、ワタクシの体験もこの3度。少しずつ変わっているらしいが、良く解らない。
配役の変更は解る。
1度目:シテ太郎冠者が山本則秀 アド主が則重
2度目:シテ主が東次郎 アド太郎冠者が凜太郎
で、上記が今回で、太郎冠者がシテとなり凜太郎、主はアドになって東次郎。
シテとアドの区別がよう解らん。
パンフには、凜太郎「師」が、太郎冠者で鷺の舞を舞うとあった。
今回、凜太郎の鷺舞は、片足をあげるときにやや身体がブレて、体幹が乱れたか、という印象。前回はそんな気はしなかったのだけど。それでも、ドジョウをついばむ姿やら、常の方にはない動きで、宜しかったです。
また本曲は「語り」が多く、凜太郎さん、神泉苑の池の由縁を語る長~い語りを、滞りなく。
東次郎さんは、今回は、前回とは同じ主役だけど、アドに廻っていた。凜太郎君の鷺舞を見つめる眼。演技上は楽しい眼。が、本心は心配というか、しっかりやっているかという眼。
凜太郎君の成長ぶりが、目を見張る。君では失礼。
新作能『夢浮橋』、初めて。瀬戸内寂聴原作。梅若六郎(現、楼雪)と山本東次郎が演出した作品。
初演は、2000年3月。その当時の写真を見たら、浮舟役が梅若晋矢(現、紀彰)でビックリ。阿闍梨役が梅若六郎(楼雪)、匂宮役が金剛永謹だった、と。
源氏物語の宇治十帖、「浮舟」を題材にして、寂聴が書き下ろした「髪」という作品が原作。
浮舟が、匂宮と薫の二人と関係を持ってしまい、懊悩し、入水自殺を考えるが失敗、叡山・横川の僧、恵心僧都に助けられて出家する。髪を下ろす、のが阿闍梨で、その黒髪に邪淫し、破戒僧となってしまうが、最後は悟りへ向かう。
まあ、エロチックな能で、前半、匂宮と浮舟との密会のシーンで、匂宮が、舞台上で浮舟を袿(上着)を脱がせてしまう、という演出。裸になる、ということ。こんな演出初めて。
全体的に、演出はやや現代劇風で、わかりやすい所作。
後半は、浮舟の髪を切るときに、阿闍梨が一房懐に入れてしまう。邪淫してしまい、行きながら地獄に落ちる、最後は仏法によって、救われる。
その後半、「毀形唄」(きぎょうばい、と読む)という声明が謡われる。誰が謡っていたか良く解らないけど、地頭の山崎さんかも。山崎さんが地頭を勤めたのがやや不思議だったが、最後の「南無阿弥陀仏」の独吟部分も、とても素晴らしい声でした。だから、「毀形唄」も、山崎さんだったかな、と。
山崎正道さんは、梅若会だけど、前回の定式能で予定されていた仕舞も欠席していた。本曲の地頭の練習に明け暮れていたか。
演出は先に書いたとおりわかりやすい。節付けは梅若流かも。六郎の演出だからね。だから梅若会の山崎正道さんが地頭か。
囃子方も、新作能なのに、難しそうな手をしっかりと。源次郎先生。
浮舟役の味方玄さん。声も素晴らしく、大きく、舞いも素晴らしい。これはファンになりそう。
阿闍梨の片山九郎右衛門さん、やや声が擦れていたけど、さすがでした。
浮舟の観世喜正さん、素晴らしい。全部配役は良かった。初回の紀彰師の浮舟も観てみたかった。
4月16日(日)の紀彰師シテ『善知鳥』に引き続いて、素晴らしいお能を見せて頂いた。