2月15日(水) 国立能楽堂
狂言 『子盗人』 (大藏流 宗家)
シテ(博奕打)大藏彌右衛門 アド(乳母)大藏彌太郎 アド(亭主)大藏教義
(休憩)
能 『項羽』 (観世流 観世会)
シテ(老人 項羽)浅見重好 ツレ(虞氏)坂井音春 ワキ(草刈男)福王知登
アイ(渡守)善竹忠重
笛:左鴻泰弘 小鼓:田邊恭資 大鼓:守家由訓 太鼓:桜井均 地頭:藤波重彦
面:前シテ「朝倉尉」 後シテ「筋怪士」 ツレ「小面」
狂言『子盗人』、2回目かな。
今回の発見は、題名から子を盗もうとして却って可愛がってしまうと言うことが中心なのだろうが、シテ博打打ちが屋敷に忍び込む様子が、パントマイムみたいに、かなり続くことに面白みと、芸を感じたこと。
しかも、座敷に散らかった道具類、茶道具などの品定めをする際に、かなりの教養人であることが解ること。
そも、どうして盗人が博打打ちで損をした人と設定されているのか。教養ある博奕打ち。
74歳の大藏彌右衛門さん、声は出ないけど、立派なパントマイムであって、台詞の間違いもない。
能『項羽』、初めて。
唐物で、類似作品といえば、『昭君』『楊貴妃』。本作も、史記にある項羽と劉邦(漢の高祖)との戦いと、それに絡む項羽と虞氏との悲劇を扱う。
四面楚歌。
高校時代の漢文で習った、『虞や虞や汝を如何せん』との詩句を思い出す。何の詩だったか忘れていたけど、「垓下の歌」らしい。”垓下”とは、中国の古戦場。
高校時代の漢文の教師の座り姿を懐かしく思いだした。教壇の椅子の上に胡座をかいて座るのだ。そして、感極まって、李白や杜甫の詩を朗読し、解説する。当時は、何のこっちゃとも思ったが、ちゃんと勉強しておけば良かった。
虞氏と言えば、漱石の「虞美人草」も連想される。(虞)美人草とはひなげしの花。どうして漱石はこの小説に「虞美人草」という題名をつけたか、解りませんね。この「垓下の戦い」や項羽、虞氏と何らかの関係があるのだろうか。
な~んてことを事前に考えていて、曲そのモノの予習は不十分でした。
前場で「草刈り男」がワキとして登場する。何となく、草刈りというと掃除のような印象だったけど、飾るための草花の採集なのですね。
刈り取った草花の中で、ワキが赤と白のひなげし風の花を担ぐ。川を渡って帰ろうとすると前シテ老人が現れ、船賃を払えと。最終的に、赤いひなげしを1本貰って、船賃とする。
不思議に思うと、実は項羽の幽霊であった。渡し守は当番制で、その日の渡し守は、アイとして登場するが、知らない、渡していないという。そこで、垓下の戦いや、虞氏の自殺、項羽の自殺の話になっていく。
アイの語り。絶句してしまって、後が続かない。ワキの援護でどうにかなったが、そういえば、アイの狂言方には後見がつかないから、絶句した場合教えてくれる人がいないのだね。
善竹忠重、75歳。あまり出ない曲なので、覚えるのが大変だったのでしょうね。アイ語りは難しい。
後場は、高楼を示す一畳台が出され、そこから飛び降りるツレ虞氏のさま、戦う後シテ項羽。勇壮な舞働き。最後は飛び降りて自殺するさま。あれれ、前場では首を搔ききって自殺するのだけど、違うじゃん。ま、良いのだ、そんなこと。
割と物語的な解りやすい曲でした。
でも、それ以上の感動や、シテ方の技量の良さは感じられず。ああそうね、というだけでした。