1月20日(金) 国立能楽堂
狂言 『隠狸』 (和泉流 野村万作の会)
シテ(太郎冠者)石田幸雄 アド(主)野村萬斎
(休憩)
能 『東北』 (観世流 銕仙会)
シテ(女 和泉式部)浅井文義 ワキ(旅僧)御厨誠吾
アイ(門前ノ者)野村太一郎
笛:森田保美 小鼓:幸正昭 大鼓:大倉慶之助 地頭:馬野正基
面:シテ「若女」(古元休 作)
新年2回目のお能。初回が不満足だったので、期待して。
狂言『隠狸』、記録上3回目だけど、全部和泉流で、なんだかなあと思っていたら、パンフレットによると大蔵流には無いらしい。
狸汁を振る舞おうと言い出す主。実は太郎冠者が密かに狸釣りをしていて、小遣い稼ぎにしていることは見抜いている。買ってこいと命じられ、嫌々市に行って、実は自分が釣った大きな狸を売ろうとの算段。先回りしていた主に見つかるが誤魔化そうとする。主は、酒を振る舞い、舞を舞おうと。必死に隠そうとするも、相舞に誘われて遂に露見して、やるまいぞ、やるまいぞ。
何だか良くわからない。太郎冠者は自分で釣った狸を主に売りつければ良いのに、とか、どうして市で飲んでしまうか、等など。
狸は美味しくないのに。
萬斎は、オリンピックの多忙をくぐり抜けたが、キチンと狂言をするところがエライ。
能『東北』、2回目。初回は2019年1月で、まだまだの時代で、何の記憶も残っていない。
今回は、これほどの予習をしたことはなかった。
まず、新しい仕舞お稽古が「東北」クセと指定され、まずは詞章からと、しっかり読み込んだこと。仏教用語も多いから、そこも含めて。
YouTubeに、観世宗家25世の観世元正さんの謡があった。謡のお稽古をしている教本の次ぎの曲が『東北』であり、これを見ながら、聞き込んだ。
これで相当わかった。観世元正さんの謡は、梅若本に近いけど、パンフレットに掲載されている観世流の『東北』は、違う部分が多いなあ、と。
旅僧が都に来ると、内裏の東北方にある東北院に着く。
ここは、以前は上東門院と呼ばれたところ。上東門院とは、中宮彰子の構えた院。和泉式部が使えていた。ここは詞章には詳しく話されないけど、平安当時は皆さん教養として知っていたのでしょう。
その東北院の素晴らしい梅の名を訪ねると、「軒端の梅」と。和泉式部が植えたものだと。
夜になって、後シテ和泉式部の幽霊が現れて、物語して、舞を舞い、元の住処に帰って行く。
和歌の徳と、梅の良さを出す曲。新年に相応しい。
クセの舞は、まだ具体的には習っていないけど、紀彰師の仕舞の動画は何度も観ていて、ああ、なるほどと。
続く序ノ舞。これも優雅。序ノ舞って、良くわからない。流派や曲によって違うのだろうか。あるいは舞手シテ方が工夫しても良いのだろうか。アドリブ的に変えることもあるのかしら、等と考えながら、優美な舞の世界に浸る。
新年に相応しい、能でした。眠らなかったですよ。
山本東次郎著の「狂言のことだま」の新編があり、しかもサイン本だったので、思わず買ってしまう。