12月11日(日) 横浜能楽堂
狂言堂 (大藏流 山本東次郎家)
『賽の目』
シテ(聟)山本則秀 アド(太郎冠者)若松隆 アド(そら聟・甲)山本凜太郎
アド(そら聟・乙)山本則孝 アド(女)山本則重
(休憩)
『膏薬煉』
シテ(都の膏薬煉)山本則重 アド(鎌倉の膏薬煉)山本則孝
お話 山本東次郎
小舞『餅酒』
横浜狂言堂、毎月は行かずに選んだお家のモノだけ。東次郎家は絶対に欠かせない。
『賽の目』、初めて。後の東次郎さん解説によると、20年ぶりらしい。初めてのはず。
有徳人(金持ち)が、一人娘の聟を取りたいと、高札を掲げて、算勘に優れた者、つまり計算に優れた者を聟に迎えたいという。
応じてきた一人目アド甲は、五百具(千個)の賽の目の合計を言えと出題される。手足の指を使うが正解に至らず、追い返される。
二人目アド乙にも同じ出題。算木(算盤)が必要として、これも失格。
三人目シテ聟。どういう算術を用いたか、その場ではわからなかったが、2万千と正解。すぐに娘と結婚せよ、財宝はもとより家屋敷全部あげる、と。
喜んだシテ聟は、衣かつぎを被ったアド娘と対面し、嫌がる娘の被りモノを取ると、例の如く「乙」の面。驚いて、なんやかや言い訳して帰ろうとするシテ聟。引き留めるアド女。
正直を言うとして、実はその見目が悪女だから嫌なのだと言い置いて、去って行くシテ聟。
酷いセクハラだけど、まあ良いのだ。
それより、多大な財産を相続できるのに、それより悪目の女と結婚したくない。いくらでも妾など持てば良いのに、どうして、とも思う。
計算のやり方が面白い。私なぞは、1+2+3+4+5+6=7 7×1000=21000と計算するが、そうではなかった。
どうやら、1の目が千、2の目が2千、3の目が3千、4の目が4千で、ここで1万、更に5の目が5千で合わせて1万5千、6の目が6千で合わせて2万1千、という計算らしい。かけ算は用いないのだね。
役者が沢山登場する狂言。『唐相撲』よりは少ない。東次郎家は、全員、安心して観ていられる。
『膏薬煉』これも初めて。
膏薬って、現在ではあまりイメージが無いけど、皮膚などに出来物が出来たときなど、その下の膿を吸い出す練り薬のこと。だから、都と鎌倉とどっちの膏薬が、吸い出し力が強いか、を争う。
無茶苦茶な吸い取り力を言ったり、原材料も無茶苦茶を言う。吸い出し実演合戦では、面白い笑える演技。吸って、捻寄せる、しゃくり寄せる。
最後は、都方が勝つ。都vs鎌倉も有るのでしょう。
シテ都の膏薬煉役が、泰太郎さんから則重さんに交替になった。どうしたかな。
でも、これでも安心して観ていられるのは、さすがに東次郎家。
東次郎さんのお話は、いつもいつも素晴らしい。二題の狂言の解説を、深くしていただく。聴くだけではわからないのです。謡本のような台本も公開されていないし。
なんとか、東次郎さん、全曲解説を書いていただけないか。新しい「狂言のことだま」が出版されたらしい。2500円。買おうか。
文化功労者、素晴らしいことだ。
いつものおまけの小舞は『餅酒』。この地謡には則俊さんも登場した。『賽の目』の後見でもあったが、交替していた。脚が悪いのでしょう。でも、謡声は素晴らしい。力一杯。
則俊さん傘寿らしい。80歳。則俊傘寿記念の山本会別会が催される。3月19日(日)。行こうかな。
勿論東次郎さんの舞いも素晴らしい。
東次郎家の狂言は、とにかく安心して観ていられる。奇をてらうことも無く、不必要に堅苦しくも無く、ベテランから若手まで、きっちりとした狂言。伝統の継承。