10月21日(金) 国立能楽堂
狂言 『鶏聟』 (大蔵流 山本東次郎家)
シテ(聟)山本則秀 アド(舅)山本則俊 アド(太郎冠者)山本凜太郎
アド(教え手)山本則重 地頭 山本東次郎
(休憩)
能 『浮舟』・彩色 (観世流 鉄仙会)
シテ(里の女 浮舟)観世銕之丞 ワキ(旅僧)福王和幸 アイ(所の者)山本則孝
笛:杉市和 小鼓:鵜澤洋太郎 大鼓:國川純 地頭:浅井文義
面:シテ「孫壱」
前日、前職の方々と打ち合わせ飲み会があって、欲の世界にまみれたので、その精進落としに、お能の世界へ。副作用だけではなくて、二日酔いで頭がボーッと。「欲界」から「色界」へ。「無色界」にはまだまだ。
狂言『鶏聟』、2回目か。初回も東次郎家で、2021年11月に、シテ聟凜太郎さんで。
この初回時には、婿入りのときの闘鶏風(当世風だと言われる)作法を、どこで行ったか、後の解説時に東次郎さんの解説で解ったと記録があるが、今回は、地謡とそれを示す液晶パネルによって、良く解りました。
善人で、正直モノの聟が、悪い先輩に教えられて、現代風だとして、闘鶏真似をするよう教えられ、それを受けた舅もマネをして恥をかかせないようにする、という心温まるドラマ。
則俊さん、年取っちゃった。闘鶏の真似をするんだけど、足が上がらない、動きが悪い。が、聟と舅と年齢が違う設定だからそれでも良いか。却って、それらしくて、世代差があって、良い感じか。うん、良いか。
まず、門の外で、次いで座敷でやれと教えられるが、聟は、多少遠慮したのか、”かかり”の際に立って、闘鶏真似をする。”かかり”とは、闘鶏場に見立てた白砂四方の、本来は蹴鞠に使う場所。
舅も、広縁からそこに飛び降りる。
闘鶏様の動きをして、舅を追い出してしまって、聟は勝ちどきを揚げる。これで婿入り儀式は終了、と。
地謡と液晶パネル解説のおかげ。国立能楽堂で観られて良かった。
能『浮舟』、初めて。源氏物語の「宇治十帖」中、「浮舟」の帖と「手習」の帖を題材にして、ほとんどそのまま、浮舟を描くモノ。
前場は、イグセと語り、謡ばかりで、「浮舟」の帖の話を延々と。入水を思わせて、幕に入る。
間狂言の山本則俊さん。長~い間狂言をお疲れ様。簡単には覚えられないよなあ。何ヶ所か助けが入ったが、動揺することなく、喋りきった感じ。
後場は、橋掛かりでの語りの後、舞台に入って、小書きでカケリから変わったというイロエで舞う。でも、物狂いの激しい舞ではなく、優雅な、静けさの伴う舞。
銕之丞先生は、高い声が良く出るし、ピタッと決まった型で、舞う。
全体的には、『宇治十帖』の浮舟の有様が解っていないと、不明だろう。慌てて、『源氏物語』(瀬戸内寂聴訳)の「浮舟」帖を読んできたから、解りやすかったけど。昔の人は、常識だったのだろうか。あるいは、間狂言の語りで、なるほどそういうことか、と理解するのか。
観て美しい部分としては、後シテの衣装。綺麗だった。白装束で、俗界から逃れた心の清らかさを表現するのかしら。
面は、前も後も「孫壱」だって。若く美しい女性面で、小面じゃないし、何かなと。
心を清めて、帰宅。元弁護士から高等遊民なりかけに戻って。