10月8日(土) 国立能楽堂

解説 「狂い」の徳 林望

狂言 『狐塚』 (大藏流 宗家)

  シテ(太郎冠者)大藏教義 アド(主)大藏吉次郎 アド(次郎冠者)大藏基誠

(休憩)

能 『花筐』 (観世流 梅若会)

  シテ(照日の前)松山隆雄 ツレ(侍女)松山隆之 子方(継体天皇)松山こう美

  ワキ(臣下)殿田謙吉 ワキツレ(使者)大日方寛

  笛:藤田貴寬 小鼓:鳥山直也 大鼓:白坂信行 地頭:梅若楼雪

  面:シテ「若女」 ツレ「愛姫(めごひめ)」

 

林望先生の解説、「物狂い」とは、精神的・医学的意味の狂いではなくて、憑依、エクスタシー、忘我のことであって、『花筐』の照日の前は、狂って芸人となる女のことと。

まあ、『隅田川』などで、解ってはいたことだけど、纏めて話して頂けるとありがたい。

ただ、長いし、メモを持ちながら話す。ここが、馬場あき子先生とは違う。若いのに。

 

狂言『狐塚』は2度目かな。21年9月に狂言堂、和泉流万作の会だった。

前回は、太郎冠者が一人で鳥追いに出てきて、心配した主と太郎冠者が助けに来る。

今回は、太郎と次郎冠者が鳥追いで、主が夜に来るが、狐だと思う、という筋。

眠ってしまった。

 

能『花筐』。初めて。梅若会で、地頭に楼雪先生が出演なさるので、これは是非とも、と。

前場は、越前の味真野にいた、おおあとべ皇子のもとに、先代天皇武烈が男系子孫を残さずに死んでしまったことから、次の天皇に指名されて、上洛する。付き合っていた前シテ照日の前(遊女)は、たまたま暇で留守だったが、文と花筐を残して、皇子は都に上ってしまう。概略事実だ。短い。

前シテは、中入りせずに、橋掛かりで控えていて、後場。秋になって、継体天皇となった皇子は、紅葉狩に出かける。味真野から、雁に導かれて南下して都に向かう、後シテ照日の前。御幸行列にあたり、君(新天皇継体)に会おうとするが、止められ、花筐も打ち据えられてしまう。泣いていると、宣旨があって君の前に出、「狂う」。イロエ、クセ舞。

目出度く、二人して都に戻り、結婚した、ということ。

その後場の舞、狂い、が、見どころの曲。「筐ノ段」というらしい。ここから舞の連続。激しくはないが、狂いで、優雅に。

松山隆雄さん、梅若会だけど、ちゃんとしたお能のシテを観たのは初めてか。相模原在住。型が梅若で、親しみやすい。

シテツレが息子さんの松山隆之。上手だと思うよ。子方が、その子、孫のこう美ちゃん。可愛らしかった。

後場の舞の連続でお疲れだったか。橋掛かりの退場が時間がかかる。あそこの橋掛かりは、長いし。

梅若の謡、地謡は、慣れもあるけど、心地よい。ああ、良い気持ちって謡い、聞き惚れる。テンポも良いし。

難しい節付けが続くけど、梅若謡本を見て、楽しむ。ちょっとやそっとの練習では謡えそうもない。

特に地頭が楼雪先生だと、どうしてこうもまとまるんだろうか。どこがどう違うとか分析評価できる能力は無いが、違うのです。さすがにさすがに、人間国宝。足が悪くて舞えないけど、謡ならば天下一品。国立能楽堂では、貴人口からの出入りはできないのか。