10月2日(日) 横浜能楽堂

能楽師による実技と解説 安藤貴康(シテ方観世流 銕仙会)

狂言 『寝音曲』 (大蔵流 茂山家)

  シテ(太郎冠者)茂山七五三 アド(主)茂山宗彦

(休憩)

能 『通小町』 (観世流 銕仙会)

  シテ(深草少将の怨霊)観世銕之丞 ツレ(小野小町)観世淳夫

  ワキ(下安居の僧)髙井松男

  笛:杉信太朗 小鼓:幸正昭 大鼓:亀井実 地頭:西村高夫

  面:シテ「痩男」 ツレ「小面」(河内作、谷口明子彩色)

 

実技は、唐織りの着付け。対象が鵜澤光さん。やはり大変なのですね、着付けは。

だからこの日の『通小町』は、仲入で着替える時間が取れないので、後見座にくつろぐだけで、物着もせず、前ツレの里女と後ツレの小野小町亡霊と、装束も面も変わらずに務めた、ということらしい。

 

狂言『寝音曲』。記録上5回目。直近は、21年7月の狂言堂。和泉流野村万蔵。

ほとんどは大蔵流で、茂山家のも見たことがあるが、今回は新発見。膝枕をしたり身体を起こしたりしながら謡うのが「放下僧」だった。

この前習った仕舞の部分で、こういうことがあると楽しいね。流派問わず、お家を問わずに「放下僧」なのか、たまたまなのか解らないけど、いつかまた『寝音曲』を観るときに楽しみが出た。

 

能『通小町』、2度目。2021年7月に、友枝昭世さんシテ。

前場で、里女(前ツレ)が、木の実を持って下安居中の僧を訪ねてくるのだが、ここで、次々と木の実の名をあげるのは何故だろうか。何か意味があるのだろうけど。

小野小町の幽霊を示唆して、中入りせずに、後見座。そこから舞台に戻ってきて、ワキ僧に弔いを頼む。仏弟子になるための受戒も頼む。

良い感じになっているところに、橋掛かりから被り物を被ったシテ深草少将の怨霊が出てくる。小町だけ授戒は怪しからぬ、というわけ。

そこから、シテとツレの喧嘩というか、嘘つきめ、騙しやがって、あんなに辛い百夜通いをさせておきながら、自分はしれっとしていただろう等など。こんな苦しみは解らなかっただろう、わたしではなくて、月を待っていたのだろう、と詰め寄る。

「月は待つらん 月をばまつらん 我をば待たじ虚言(そらごと)や」の台詞は、当時受けたらしい。

この点『申楽談儀』に記載があるらしいが、見つからない。

最後が、どういう訳か、2人揃って罪を滅ぼして、共に成仏してしまうという、アレレの結末なのですが。

小町と深草の少将の言い争いが、楽しい曲なのかなあ。

笛の杉信太朗さん。良いね。

大鼓の亀井実さん。葛野流十五世家元亀井広忠さん、その父で人間国宝の亀井忠雄さん。顔も似ているし、亀井姓だし、親戚なのでしょう。

ワキの髙井松男さん、下掛かり宝生流。ちと脚が悪いかな。移動に困難。

面が面白かった。ツレが付けていたのが、「小面」だなとは思ったが、何だか、頬の辺りがほんのり紅っぽい。アレレと思って、帰りに紹介掲示を見たら、河内作の古作だけど、谷口明子さんが彩色したと。小町のかわいらしさを出したくて、彩色したんだろうか。彩色は取れるんだろうか。古作に彩色するなんて勇気があるなあ。銕之丞家の所有かな。息子の為に、か。

 

薬の副作用で、だるく、目眩も酷かったけど、知った曲で、楽しめた。お稽古仲間がお着物で来ていたが、袷の時期なのに、暑くて、選択に苦労したか。お着物を着てこられた見所は少ないように見えた。