9月18日(日) 梅若能楽学院会館
仕舞 『草子洗』 伶以野陽子
『半蔀』 三吉徹子
『梅枝』 髙橋栄子
地頭:山中迓晶、梅若英寿その他
狂言 『蚊相撲』 (大蔵流 山本東次郎家)
シテ(大名)山本則重 アド(太郎冠者)山本則秀 アド(蚊の精)山本則孝
(休憩)
能 『卒塔婆小町』・一度之次第
シテ(老女・小野小町)富田雅子 ワキ(旅僧)工藤和哉 ワキヅレ(従僧)大日方寛
笛:藤田次郎 小鼓:大倉源次郎 大鼓:柿原弘和
地頭:梅若楼雪 副地頭:梅若紀彰
梅流会とは、梅若会の中の女流シテ方の会で、梅若定式能ではないものの、同格で、定例の毎月第3日曜日に、年に2回開かれている。
どうも女流のシテ方に偏見があったのか、梅流会参加は初めて。
台風接近、土砂降りの中を、中野坂上から歩くが、風雨で裾が濡れてしまう。
混んでいる正面席より、脇正面に座った方が、よく見える。
仕舞三曲は全員女流で、そのせいかどうか、若い男性の舞よりは温和しめで、激しい動きがなく、ワタクシでもできそうな型が多くて、参考になる。いつも教わっている型で、安心できる。
地謡は、女性と言うことはできないのでしょう。が、後のお能の地謡と比べると、弱い。差は格段。
狂言『蚊相撲』。東次郎家だから、すっかり安心して観ていられる。
これも大名狂言だから、先日の狂言堂の東次郎家の『文相撲』と同様に進んでいく。過を言うシテ大名、追随して自分も自慢したいアド太郎冠者。違いの主点は、『文相撲』が新参の者で、何の芸でもできるようなのに対して、こちらは、初めから相撲取りを雇いたいと言うこと。
シテ大名が、先日は初心者の凜太郎さんだったが、今回はすでに一流になっている則重さん。世代がひとつ違う。安心感は確かに違う。
相撲対決になるのは同様。こちらは、初めから蚊の精で、血を吸ってやろうという算段。最初は吸われるが、扇で煽られて、負ける。最後に負けて残ったアド蚊の精が、悲しそうに鳴くのは、なんだか、哀しい。
能『卒塔婆小町』、3回目。直近は2020年11月の梅若別会で、山崎正道シテだった。小書きは同じ、一度之次第。
前回も、梅若謡本を追ってみていたが、最初がワキとワキヅレの次第なのに、この小書きでシテから出てきて、箇所を探すのに苦労したが、今回は、学習してきて、シテの次第を開いて待ち構える。
シテが、橋掛かりから、極めてゆっくりと登場し、立ち止まり、一の松で謡う。面を被っているので、外観上は女流とはまったく解らないが、やはり、シテ謡は女声。弱い。が、高齢婆の役だから、良いのか、とも思う。
更に、隠しようがない腕先が、女性の高齢者のそれで、却って、それっぽい面もある。
全体として、女流シテは、どうしても弱くなる面を対策すれば、悪くないと思う。
地頭の楼雪先生。もはや貴人口からの登場はありふれた風景。良いお声だ。隣に座る紀彰師のお声もよく聞こえる。その両脇も重鎮で、この地謡陣は、最強に近いと思った。
シテの本人だけど、零落した小野小町本人かなとも思われるが、もしかしたら、小野小町が憑依している、さる老女かもしれないな。その憑依の中で、ワキ旅僧との問答も解りやすい。
その後、「出羽の郡司。小野の良實(よしざね)が女(むすめ)。小野の小町がなれる果てにて候」と名乗るが、これは、本当のことだろうか。なれの果てになった小町本人か、その憑依か。
ワキ旅僧に、乞食して、「のう、物賜べのう、お僧のう」と頼んだ後、いきなり、百々夜通いの深草の四位の少将が憑依する。
こうした、憑依の連続とも捕らえられないかな。
最後、ゆっくりゆっくりと橋掛かりを下がっていく様は、美しくも悲しい。誰も拍手しないのが良かった。
こうした曲に、小鼓の源次郎先生。素晴らしくマッチ。ベストなタイミングで、ベストの音や掛け声で、囃す。素晴らしい。
帰り道は、雨も上がっていて、気分良く帰れる。6日間連続のお出かけで、いかな高等遊民と言えども少々疲労。台風も近づくし、お休みしましょう。