9月11日(日) 横浜能楽堂

狂言組 (大蔵流 山本東次郎家)

『文相撲』

  シテ(大名)山本凜太郎 アド(太郎冠者)山本則孝 アド(新参の者)山本泰太郎

(休憩)

『鏡男』

  シテ(夫)山本則重 アド(妻)山本則秀

お話 山本東次郎

 小舞 『?』

 

狂言堂、やや飽きてきているが、東次郎家のは観る。

 

『文相撲』、直近は2020年2月。典型的な「大名狂言」。今回は、凜太郎さんが大名役シテ。若くて大丈夫かしらと思ったが、大丈夫でした。堂々として、立派でした。

大きなことを言って、見栄を張るばかりの大名。新参の者を召し抱えるについても、大きく見せたいから、あれこれ太郎冠者と申し合わせ。

新参の者が、相撲を取れるというので、立ち向かわせたいが、手下にはいない。シテ大名が相手をするが、召し使われたいのだから、あいつはきっと負けるだろう、と。ところが、強い。なんとかという技、猫だましのような技を出して、シテ大名を負かせてしまう。

ここで、シテ大名、相撲の秘伝書のようなものを出して調べて、この技に立ち向かう。しかも、禁じ手までも使って、やっと勝つ。意気揚々だが、もう一番。

もう新参者は雇われなくなるから負けるだろうと思ったが、豈図らんや、その気になってしまった新参者が又々勝って、そのまま消え失せてしまう。

悔しい大名は、太郎冠者を相撲で投げ飛ばして、憂さを晴らす。

極めて解りやすい曲。シテ大名の心理や動作をキチンと演じられるか。長い曲。

凜太郎さん、良かったです。成長しましたね。

泰太郎さんの摺り足は美しく。芸の継承は大丈夫だと思います。

 

『鏡男』、直近は2020年1月。

都からの土産に、妻に鏡を買ってくる。高価な珍しいもの。妻がそれを見ると、あれまあ、「女」がいるじゃないの。都から女を連れてきたのね、と追い立てる。鏡を知らないのです。

怒りの妻が鏡を見ると、さも恐ろしい人相の女がいる、という辺り、面白い。

則重、則秀の兄弟が、淀みなく。

 

もっとも楽しみにしていた東次郎先生のお話。

前半は、『文相撲』と『鏡男』の深~い解説。ホントに良く解るのです。単にストーリーを解説するだけじゃなくて、奥の意味まで解説して頂ける。

例の如く、小舞を披露してくれる。中秋の名月だと言うことで、芭蕉の句「三日月の 頃より待ちし 今宵かな」をモチーフにした新作狂言で舞ったものだという。なんという題名の小舞か、曲名も解らなかった。

素晴らしく、感動的な小舞。

 

東次郎先生、8月下旬に、コロナではなくして高熱を発し、肺炎となり、かなり重かったのだと。でも、復活して、今日を迎え、この小舞を披露して頂ける。

1937年生まれだから、85歳か。ご立派。だけど、失礼ながら今観ておかないと、という気になる。