9月10日(土) 杜のホールはしもと

開口一番 前座 柳家小きち 『子ほめ』

柳家さん喬 『そば清』

柳家喬太郎 『野ざらし』

(仲入)

喬太郎 『夫婦に乾杯』

さん喬 『柳田格之進』

 

副作用により(と、思う)だるい、ボーッとする、フラつく。

なので、この日の落語会も、出かける前は、家から近いのに、止めようかな~と考えてしまう。ベッドで寝転んでいた方がよろしいのだ。

しかし、何かの、それこそ病気でだるいのではなくて、副作用なのだから、身体を休めても良いことなし、却って、鬱々としてくるだけなのだ、と発起して出かける。

 

開口一番前座の『子ほめ』は、ダメ。

こちらの体調もあるけど、何でこんな下手な落語を聴かなくちゃならないのか、などと悪態をつきたくなる。解っていますよ。前座には経験が必要で、彼らも真剣に務めているんだから、温かい心で迎えなくちゃ行けないことぐらい。

 

ところが、さん喬の『そば清』、新そばの季節などとマクラを振ってから、蕎麦を上手そうにたぐる、あの仕草、あの擬音。

う~ん、これだけで、蕎麦屋に駆け込みたくなる客も多かろう。

さん喬の工夫。「盛を掛けにする」という洒落。蛇が、漁師を食べて苦しくなって食べる赤い葉は、何でも溶かすわけではないのですよ、と事前に念を押す。

これがあるから、最後に、清兵衛さん、赤い葉を口にして、蕎麦が着物を着ているよ、というオチが明瞭になる。

さすがだねえ。上手だよ。本格的な上に、キチンと現代的に解りやすくも。

ここで、先刻迷った自分がバカのよう。大笑いして、副作用を吹っ飛ばす。

 

喬太郎。登場前に、尺代が出てきて、座布団が二枚。一枚は二つ折りにして、尻の辺り。

脚が悪いんだって。太っているし、正座が出来ないんだって。

『野ざらし』。相変わらずの名調子で、トントンと。良いねえ。

 

仲入後は、そのまま喬太郎。何かと思ったら、新作の『夫婦に乾杯』だって。夫婦の会話がないことやら何やら、夫婦の実態と理想などを落語にする。

何だか、身につまされたり、笑わせられたり。これは短い。

 

トリはさん喬『柳田格之進』。マクラもなしにいきなり本題へ。あっと思う間もなく、緊張感に包まれる。

江州浪人の柳田格之進。碁を打って遊ぶが、50両の疑いを掛けられる。無実なのに、娘が身売りして50両を用立てして、碁友の番頭にし、姿を消す。後に近江藩江戸留守居役に出世した後、偶然番頭に出会い、50両が見つかったことを知り、約束なので、番頭と主人の首を落としに出かける。

なんというのだろうか。人情噺でもないし。講談落語だな。

何回か聞いてはいるが、改めて引き込まれる。1時間を越える熱演。じっくりと、たっぷりと。

名人。芸道の力だ。喬太郎は好きだけど、さん喬は、素晴らしい。

 

この親子会。去年もあったらしく、何となく記憶にあったけど、ブログを見ても登場しない。

あった!2020年9月だな。評価は悪くはないようだったが、今回の『柳田格之進』はホントに素晴らしい。

さん喬、明記しましょう。