7月17日(日) 梅若能楽学院会館

連吟 『蝉丸』 髙橋栄子 山村庸子

仕舞 『白楽天』 梅若長左衛門

   『芭蕉』キリ 角当行雄

   『女郎花』 松山隆之

     地頭 梅若紀彰

舞囃子 『菊慈童』 井上燎治

   笛:藤田貴寬 小鼓:幸正昭 大鼓:亀井広忠 太鼓:大川典良

   地頭:会田昇

狂言 『萩大名』 (和泉流 三宅右近家)

  シテ(大名)三宅右矩 アド(太郎冠者)三宅近成 小アド(庭主)三宅右近

(休憩)

能 『俊寛』

  シテ(俊寛僧都)川口晃平 ツレ(平判官康頼)土田英貴 ツレ(丹波少将成経)山中迓晶

  ワキ(赦免使)福王和幸 アイ(舟夫)前田晃一

  笛:藤田貴寬 小鼓:幸正昭 大鼓:亀井広忠 地頭:梅若楼雪

  面:シテ「俊寛」 ツレ(成経)「中将」か ツレ(康頼)「?」

 

紀彰師の出番も少ないので、欠席しようかと思ったが、病のために鬱々としかねないので、事務局にメールして当日券。

もっとガラ空きかと思ったが、案外入っていて、8割くらいか。川口さん頑張って売ったかな。能楽エトセトラという音声番組にも出演していたし。会場にはその音声が流れっぱなし。

 

女声の連吟。悪くは無い。

仕舞3曲。長左衛門さん、角当行雄さんのベテランの仕舞。しっかりはしているが、下に居から立ち上がる際など、身体がブレる。お歳だからブレて当たり前ですが、いつも紀彰師のまったくブラつかないお仕舞いでお稽古しているので、ああ、ブレるんだあ、ワタクシもブレても仕方ないんだあ、紀彰師は特別なんだあ、と。

松山隆之さんの『女郎花』は、若手らしく飛び跳ねて。若々しいのも良いんじゃないかな。

 

舞囃子『菊慈童』。仕舞の『菊慈童』はお稽古していたので、解りやすかったが、仕舞部分が始まる前が長いね。ここはさすがベテランで。仕舞の部分は、やはり、下に居や、安座を省略。年齢に応じて工夫しても良いのだ。

 

狂言『萩大名』、記録上も9回目。三宅家は初めて。

若干の演出というか色合いの違いがあった。シテ大名が、教養の無いバカだけど、天真爛漫に見えた。それをなんとか支えて、みっともないことはさせないように努めるアド太郎冠者。でも、最後に、「萩の花かな」が出て来ないので、引っ込んでしまうのだが、三宅家の演出では「恥を与えよう」と独り言ちて太郎冠者が密かに退出する。今までは無言だったから不思議だった。

これも呆れたというより、教育の一環なのかしら。そういう三宅家の解釈か。

 

能『俊寛』、これは5回目。直近でも22年4月に国立能楽堂公演で観た。金剛流。

今回は、事前に梅若の謡本を買って、読み込んで、まあ謡えるようにまで予習した。

 

行きの電車内で真剣に読み返していたら、隣のお爺さんに声を掛けられた。それはなんですか、と。色々説明したけど、能を観たことがない方だったので、理解は難しいか。その方は、インドに一人で仏跡を訪ねる旅をした方で、話しは面白かった。

スジャータ牛乳という名前の由来は、仏陀が荒修行中に、乳を飲ませて回復させた女性スジャータから採ったらしい。スヴェータじゃなかったけ。

まあ、とんでもお勉強。

 

能は、全体として緊張感が出ない舞台だった。

まず驚いたのは2人のツレが、面を掛けてきたこと。直面のはずじゃ無かったか。どういう意図だったのかしら。だから、正確には役者が不明。声で多分こういう配役と推測。面の紹介も無いし、解らない。あまり深みのある面では無かった。

ツレ平判官成政役が、お扇子を持つ指が震えて、身体もグラグラと落ち着かない。観ていて不安になる。緊張したのかな。

地頭の梅若楼雪師は、今回も、貴人口から支えられて。それは仕方ないが、こうしろとか話している声が聞こえて、やや興ざめというか、仲間意識だけというか。折角の地頭も、よく声が聞き分けられなかった。

シテの川口さんはしっかり演じて、謡っていました。声が大きいし、良い声だから。節付けも正確で。

しかし、どうも川口さんだけが浮いている感じで、この一番という緊張感が出なくて、全体としては、感動は薄れてしまったと思う。残念でした。