7月7日(木) 横浜にぎわい座

桃月庵こはく 『牛ほめ』

柔 『船徳』

ゲスト 鉄道物真似 立川真司

(仲入)

剛 『年枝の怪談』

 

結構久しぶりの落語。

この7月7日午前中に、去る病の検査結果告知があって、それに向けて精神状態が落ち込み、前日の7月6日は、小鼓のお稽古はお休みし、午後にチケット買ってあった国立能楽堂定例公演(骨皮 籠太鼓)もサボり、夜の立川志らく落語独演会もサボり、家にこもっていた。能楽や落語でチケットあるのに行かないのは滅多にない。

 

7月7日午前中の告知を受けて、却って気分が躁状態になってしまって、P7からの三三独演会には楽しく出席したのでした。

 

二つ目桃月庵こはくの『牛ほめ』、普通というか、工夫も無く、つまらん。

 

三三の『船徳』。勘当されている若旦那が船乗りになろうって、ご存じ滑稽バカ噺。

三三は、ホントにテンポが良い。舟を漕ぐ様、腰の動きが秀逸、棹の使い方、櫓の漕ぎ方。人物の表現。どれも素晴らしい。上手だねえ。

 

ビックリしたのはゲスト立川真司の『鉄道ものまね」。有名だったらしいけど、初めて聞いた。面白かった。爆笑した。秀逸。

大体色物はあまり興味が無いのだけど、この立川真司は、良い。新幹線、根岸線、横浜線、京浜急行線。横浜のにぎわい座関係のネタだけど、ここら辺りの観客は、日常的だからほとんど笑える。通過音、出発音、アナウンス、線路の継ぎ目、等など。大笑い。

思い出したのは高校時代。吉田君。なんかクラスのお楽しみ会かなんかあると、皆におだてられて、鉄道の音、ドアが閉まる音や、走行音などを演じて見せていた。母校は3年間クラス替えが無いので、3年間楽しんだ。あの吉田君は今どうしているんだろうか。

 

バカ受けして、仲入後は『年枝の怪談』、初めて聴くネタで、どうなんかなあと耳を立てる。

江戸時代の寄席。江戸の大看板の一人、春風亭柳枝一門が、横浜と神奈川で興行を張る。柳枝の一番弟子が年枝。2箇所の寄席で、交替で仲入前のトリ、大トリを務める。大成功となった千秋楽後、年枝が按摩を取っていると口論になってしまって、按摩の首を絞めて殺してしまう(と思ったのだが)。

本来自首・出頭すべき所、心に訴える話が出来るまで地方で修業させてくれと頼む年枝。師匠の柳枝もこれを許し、年枝は地方へ。

あちこち行った後、金沢の一九亭で評判を取る。席亭から何か怪談話をと頼まれて、三遊亭圓朝の名作「真景累ヶ淵」をかけることに。

ここから、「豊志賀の死」の段が実際に始まる。構成上は年枝が喋っているんだけど、実際は三三の「豊志賀の死」。おお、すげえなあ、このまま「豊志賀の死」を全部やって、それで『年枝の怪談』って訳か、と思ったら、首を絞める辺りで、客席にいたある人物が、ぬっと顔を上げると、あの神奈川で首を絞めて殺した(はずの)按摩だ。ビックリして気を失う年枝。

成仏できない怨念だと思い、悔やみに出家して僧侶となり、今度は新潟の去る寺の住職。そこに江戸から春風亭柳枝一門が地方興行に来ていることを知り、年枝は密かに挨拶に伺う。そこで、実は、あの殺していたと思っていた神奈川の按摩は気を失っていただけで、記憶も無く、年枝は本当は罪が無かったのだ。

じゃあ目出度く一緒に江戸に帰ろうと、三本締めをしようとすると、いや「締めるのは嫌だ、また呪われる」がオチ。

ああ、そう。そういう怪談話。圓朝の名作を取り入れた新型怪談話。笑いも含めて。オチは凄惨では無く。

良いんでないですか。「豊志賀の死」も途中まで楽しめるし、あらたな怪談話も加わって。三三の口調は淀みなく。

 

名人に近いと思うのだけど。三三はやはり一押し。

病の告知も吹っ飛んで、元気になったのは良いけど、元気になりすぎ。

8月いっぱいは、精神的には治療に専念しようかな。大人しく。