6月12日(日) 横浜能楽堂

狂言組 大蔵流 山本東次郎家

『衣大名』

  シテ(大名)山本東次郎 アド(太郎冠者)山本凜太郎 アド(衣商人)

(休憩)

『鎌腹』

  シテ(夫)山本則孝 アド(妻)山本則秀 アド(仲裁人)山本泰太郎

お話 山本東次郎

 小舞:鸚鵡

 

『衣大名』は初めて。明治39年に杉谷という人が「裸の王様」を題材にして狂言にしたのを、3世東次郎が当時かな、改作上演し、それを昨年90年ぶりに、更に少し変えて上演したのだそう。それ以来2回目。

初見に決まっていた。

すっぱが、珍しい装束が大好きな大名に売りつけようと、衣商人となって、実際には何もないのに、心素直な人だけには見えると「霞の衣」を売りに来る。見えないのだけど、そうとは言えないシテ大名、太郎冠者も見えると言うし。

裸の姿で街に出て、誰も指摘してくれないが、寒いので、ぶるっと震えて、くっさめ、くっさめ、くっさめと3回くしゃみをしてお終い。

すっぱが売りに来る前に、自分はどれだけ珍しい衣装を持っているかを、太郎冠者に持ち出させて披露するシーンは、現世東次郎さんの工夫らしい。

珍しい狂言で、狂言所作は、さすがに東次郎さん。右膝痛はまったく感じさせない。

 

『鎌腹』は何度も。妻に虐められるシテ夫。自殺しようともがくが出来ない。ちゃんと山に樵に行けば良いんだ、許して貰えると思い直す。

ここで、アド妻が、自殺を思いとどまるように説得した。そうだったかな。うれしくなったシテ夫は、鎌を返すと、やっぱり逆に鎌で追い立てられるという始末。

可哀想に。気弱な夫と、気丈夫な妻と。でも、これは妻が酷い。離婚してしまえと思うが、それも出来ないのでしょう。

後の説明で、色々工夫があったらしいが、そこまで見熟せていないです。

 

東次郎さんのお話は、いつも為になるし、面白い。

で恒例の小舞。ロビンソンクルーソーから着想を得た新作狂言中に出てくる小舞で、鳥尽くしの詞章で、『鸚鵡』というモノ。

だいぶ身体の弱られたであろう則俊さんが、力一杯の地謡。そして東次郎さんのしっかりした小舞。

小舞でウルウルしてしまう。

東次郎家は、全体として、まとまって見えるし、上手だし、真剣だし、安心して観ていられるし、良いなあ。

則重さん、則秀さんの子世代も、初舞台になるような。

 

狂言堂も、前回出席するのもやや疲れてきたけど、東次郎家のモノは見るつもり。今年度は9月と12月。ただ、12月11日(日)は梅若会定式能で、紀彰師シテの『定家』と重なる。これは、紀彰師シテ『定家』を優先せざるを得ません。