5月15日(日) 梅若能楽学院会館

本日の公演について 梅若紀彰

<平家の部>

連吟 『熊野』 内藤幸雄 角当直隆 川口晃平

仕舞 『佛原』 髙橋栄子

独鼓 『小督』駒之段 山崎正道 小鼓:大倉伶士郎

仕舞 『経政』クセ 山村庸子

   『経政』キリ 井上貴美子

独吟 『平家』 野村万蔵

仕舞 『敦盛』キリ 川口晃平

   『通盛』キリ 山中迓晶

   『實盛』キリ 梅若長左衛門

   『景清』 角当行雄

舞囃子 『碇潜』 松山隆之

    笛:松田弘之 小鼓:大倉礼士郎 大鼓:安福光雄 太鼓:小寺真佐人

独吟 『大原御幸』 梅若紀彰

(休憩)

<源氏の部>

連吟 『鞍馬天狗』 野崎美保 富田雅子 鈴木矜子

仕舞 『橋弁慶』 松山隆雄 松山絖美

   『頼政』 角当直隆

   『巴』 伶以野陽子

   『箙』 三吉徹子

連吟 『八島』 土田英貴 川口晃平 内藤幸雄

独吟 『正尊』起請文 山崎正道

仕舞 『船弁慶』クセ 会田昇

独吟 『船中之語』 森常好

仕舞 『船弁慶』キリ 梅若英寿

独吟 『安宅』勧進帳 梅若(実改メ)楼雪

舞囃子 『安宅』 梅若紀彰

   笛:松田弘之 小鼓:大倉礼士郎 大鼓:安福光雄

 

狂言と能を行う会とは違って、全体として、謡や仕舞、舞囃子などで、能の曲の一部分を並べて、テーマに沿って演じる、特別の企画。

前回秋だったこともあって、「晩秋の調べ」というテーマでの公演だったが、これはワタクシは行っていないのでブログにないけど、今回は、平家物語を題材にして、大きく平家の部と源氏の部に別けて構成したモノ。

各部では、一応歴史的順に従って、見どころなどを演ずる。

梅若会のYouTubeチャンネルで、「能楽エトセトラ♯2」として音声だけでも取り上げられており、それの効果もあったか、梅若会総出演で関係者も多かったか、満席の盛況。

ブログの分類にはチト困るが、まあ「能」でしょう。

 

紀彰先生の、今回の企画の趣旨などの話があった後、始まる。

個別に感想等書いても、大変なので、印象に残ったモノを順に。

 

狂言方野村万蔵師による『平家』語り。どうしても出典がわからぬ。『平家』という曲は、狂言でも聞いたことがないし、能でもなくて、能の間狂言語りでもないようだ。

野村万蔵師が正中に座る。右手は扇子を持って、琵琶を抱えるように見えた。左手は胸の前に指を丸めて持ってこれも琵琶を抱えるよう。眼を閉じて、やや俯き、要するに、琵琶法師語りの姿形。

語りも、おそらく平家物語の一部だろうが、謡い方で、琵琶を掻き鳴らすような手法。

これにはビックリ。狂言方の芸で、こういうのがあるのだろうか。素晴らしい。至芸。琵琶無し琵琶法師語りを、さも琵琶と共に語るかのよう。

野村万蔵家に伝わるのだろうか。和泉流にあるのだろうか。

 

仕舞『橋弁慶』。出演者が松山隆雄さんと絖美、とある。誰かなと思ったら、可愛い女の子で、綺麗な衣装を着て、義経役なのでした。爺と孫。後見的には隆之さんも出ていて、3世代の芸。

可愛い。

 

梅若楼雪師の独吟『勧進帳』。事前のチラシでは梅若実と書いてあったが、実改メ楼雪と。

まあなんという素晴らしい謡声。節付け謡が、なめらかで、それでいてはっきりしていて、聞き惚れるというのはこのことなり。日本一。

 

『船弁慶』クセ。「然るに勾践な~」で始まる、習って、舞った仕舞。小生の号である「長流水陶朱」の「陶朱」公が出てくる。懐かしや。お稽古した型とやや違うけど、違いもわかって面白い。ああいう風に舞っても良いのね。

 

梅若英寿さんの仕舞『船弁慶』キリ。まだまだ若いだけだけど、みんなで育てましょう、と。

 

最後は、舞囃子『安宅』、シテ紀彰師。これにも絶句。素晴らしいの一言。

どうして、紀彰師は、光って見えるのだろうか。ワタクシども弟子の欲目では決して無い。実際に「違う」のです。では、どこが違うのか。それがコトバで説明出来はしない。語彙不足か。

違う、光っている、としか言えないもどかしさ。

一つひとつの型、発声、動作の基本がキチンとしていて、その上で、場面に合わせた感情というか心が溢れてきているから、違うのです、光っています。とても凡人の素人には出来ません。

光る君、でした。舞囃子でウルウル。

ちゃんとお稽古しましょうね。折角紀彰師に教わっているのだから。一歩でも。