5月14日(土) ミューザ川崎シンフォニーホール
指揮者:カーチュン・ウォン
モーツァルト:歌劇<後宮からの誘拐>
シベリウス:ヴァイオリン協奏曲
ソリスト 南紫音
ソリストアンコール・バッハ無伴奏ヴァイオリンソナタ第3番より
(休憩)
ドヴォルジャーク:交響曲第7番
アンコール・ドヴォルジャークチェコ組曲ポルカ
能楽中毒化した高等遊民は、クラシックに対して、少々冷たくなって来ているか。
高等遊民の本家本元なのに、能楽、謡、仕舞、小鼓に没頭してきて、昔は読書するにしてもBGMにはクラシックが多かったのに、今では、謡曲を口ずさんでいるという有様。
取り分け、今回のように、ワタクシにとって馴染みが薄い曲になると、演奏会会場に足を運ぶのが億劫にもなっている。しかし、みなとみらいホール改修工事に伴う放浪生活も終盤になってきて、ミューザ川崎シンフォニーホールでの演奏会も最後であって、もう二度とここに来ることもなかろうという思いもあって、エッチラと出かける。
午後から雨も上がったし。
配布されたお知らせを見て、ムムム、と。そこには、来月6月の第378回横浜定期演奏会について、指揮者の交替の通知。
アレクサンドル・ラザレフから、広上淳一への変更。
その理由。「現在起きている諸状況を考慮し、楽団と同氏の双方で協議を重ねた結果、残念ながら今回の来日を断念することにした」と。
ラザレフは、モスクワ生まれのロシア人。ウクライナ侵略が原因なのは明らかだけど、日フィルが断ったのだろうか、日本国政府がモスクワからの入国を拒絶したのだろうか、それともラザレフが自ら回避したのだろうか。
芸術に戦争が影響してはならない。ウクライナ一辺倒の我が国の社会状況に、大いに問題ありと思う。日フィルは、その風潮に巻かれてしまったか。
ラザレフは、大好きな指揮者です。広上さんも好きですけど。
モーツァルトの歌劇曲は、軽快に。
楽団員の入場で、女性がヴァイオリンを片手に出てきて、あれれ、ヴァイオリン協奏曲は2番目のはずだけど、と思っていたら、コンサートマスター席に座る。千葉清加さんでした。アシスタント・コンサートマスターだって。良くわからない地位だけど、まあコンマス。女子コンマスを観るのは初めてかなあ。
シベリウスのヴァイオリン協奏曲。
前回に引き続いて、またまたシベリウス。時代が図らずも反映したなあ。指揮者はシンガポール人で、割と今回の紛争には偏った判断をしていない国家出身。
ソリストの、南紫音さん。キラキラネーム。1989年10月生まれの32歳。水色のロングドレスにポニーテールで纏めただけの、全体として、清楚な感じ。素敵。
極高音の弱音から始まると、ブルブルっとしてくる。良い音色だ、上手くないか。第3楽章でやや音が大きくなっても、高音部や、弱音部が美しく感じられた。
アンコールも、同様に、繊細な音。
聞き慣れない曲でしたが、退屈はしなかった。
前回と違って、シベリウスでも怒りは感じられない。
シベリウスは、もっと聞き込んでも良さそう。
ドヴォルジャークの交響曲7番。9番の「新世界より」ばかり聴いていて、7番は聴いていなかった。
でも、スラブ民族の音楽そのモノという感じ。こういうの好きなんです。
これも聞き慣れない曲だったけど、退屈もせず、眠くもならず、楽しめました。
クラシック歴として、学生時代など若い内は、YouTubeなんて無いのだから、どこかで良い曲だなと聞き及んだ曲は、安くないCDを買って、聞き込むというスタイルを続けてきた。だから、馴染みの曲は数少なく、有名曲の内でも、超が付く曲ばかりで。
こういう定期演奏会に行くと、馴染みのない曲に出会えて、よろしいと思う。今回のプログラムでも、個別に8000円も出して席を買おうとは思わないはず。
もうちょっと、聴く曲の幅を広げてもよろしいとは思う。シベリウスが悪くないと思えるようになったのは、日フィル定期とインキネンのおかげ。
しかし、つい謡曲を口ずさんでしまう能楽中毒者では、無理かも。
来年の6月までの横浜定期演奏会のチケットは、買ってあるし、趣味の重要な一部であることは変わらない。首位の座はまだキープかしら。