5月2日(月) 横浜にぎわい座

柳亭市好 『寄合酒』

柳家三三 柔・『厩火事』

ゲスト テツ&トモ コミカルソング

(中入り)

柳家三三 剛・『猫定』

 

三三の、ハマの十番勝負に続く、今年度の新企画、「柔と剛」で、毎回のゲストが出る。そのほかに、二つ目が出るのかな。

ゲストは、にぎわい座館長が選び推薦したそう。三三にはそれほどの人脈はないと自嘲気味に話していたが、他の噺家の企画でどうかはわからない。円楽は自分で選んでくるようなことを言っていたなあ。人脈、人柄なのだろうか。

三三には弟子がいない。かつてはいたらしいが、破門したらしい。

 

先日あるテレビ番組に林家正蔵が出演していて、「お客は『寿限無』を聞きに来るのではない、誰々の『寿限無』を聞きに来るのだ」と話していた。なんだか納得。

最近は、ネタ出しの企画は、ほとんどが知った噺で、だからこそ三三の『何それ』を聞きたいと思っているのです。

 

開口一番はなくて、幕開けは市好の『寄合酒』。柳亭市馬の弟子らしい。羽織を着て出てきたから前座ではないなと。

お題の『寄合酒』。持ち寄りで酒を飲もうという長屋連中。金がないので、みんな、角の乾物やからあれこれして肴を持ってきてしまうと言う、滑稽長屋噺。

下手じゃあないけど、花がない。寝はしなかった。

 

ここで三三。ネタ出しの『厩火事』。

夫婦げんかすると仲人の旦那に愚痴というか仲裁を頼みに行く女房。髪結いだから金はあるし気っぷも良いが、年上だ。旦那は、唐の故事などを引いて、亭主の大事にしている陶器をわざと壊して、真意を試すように言う。試された亭主は、陶器より女房の怪我を心配して、良かったね、だが、亭主曰く、お前が怪我したら商売できず、昼から酒が飲めない、がオチ。

テンポが良い。淀みないどころか、盛り上がるテンポ。姿形も良いねえ。どこがどうってことは言えないけど、三三の『厩火事』は、聞いて損した気分にはならない。

 

仲入前にテツ&トモの、大音量と跳ね飛ぶ漫談というかなんというか。これ単体としてはとても面白いし、受けるし、賑やかになるのだけど、全体企画としては出来すぎじゃないのか。三三が沈没しそう。

客は、少なくとも寄席ではなく、三三独演会の客は、三三の話しをじっくり聞きたがっているのです。息抜きではなくて、主役的になっちゃうと気分が削がれる。

ゲストが受けすぎてもダメなのさあ。

 

トリは『猫定』。これは知らない演題だなと思っていたら、聴いたことがあるなあ。

両国回向院の「猫塚」に最初に入った猫の話し、と切り出した辺りで、あれ聴いたことがあるよ。

助けた黒猫が、泣き声で賽子の目を当てるという。それで大儲けした博打打ちの親分定吉。障りがあって江戸を離れていた間に、女房が若い男と遊ぶ。だけではなくて、その気になってしまって、亭主を殺せと。

とある博奕場の帰りに、原で無残に殺す。同じ頃、長屋では女房が首を食いちぎられるようにして変死する。

二つ並んだ早桶。死人がのそっと出てきて、睨み合う。これは化生のものの仕業と見抜いて、グサッと暗闇を刺すと、あの黒猫。仕返ししたんだ。仇討ちした大したモノだというので、奉行が金を出して、両国は回向院に猫塚を作った、というだけの話し。

怪談話。だけど、面白くもしている。聞き入った。良い。

テツ&トモの、大騒ぎに負けなかった。

 

能楽意外に集中力が出ず、落語もイマイチだなあ、なんて思いながら出かけたけど、結論的には、やはり上手の噺家の落語は、良いね。

気分転換だけならば、とにかく笑う噺家の方が良いんじゃないかと思うので、爆笑系の噺家だけとも思うが、やはり、三三など、古典をしっかり喋る噺家も良いね。

迷う高等遊民。能楽中毒者。