4月17日(日) 梅若能楽学院会館

仕舞 『東岸居士』キリ 富田雅子

   『小潮』キリ 髙橋栄子

   『歌占』キリ 伶衣野陽子

      地頭:角当直隆

連吟 『鞍馬天狗』 シテ松山隆之 内藤幸雄 川口晃平

舞囃子 『百萬』

   シテ会田昇

   笛:松田弘之 小鼓:鵜澤洋太郎 大鼓:柿原光博 太鼓:大川典良 地頭:松山隆雄

連吟 『杜若』

   シテ梅若実 梅若紀彰 角当直隆

(休憩)

狂言 『伊文字』 (和泉流 野村万蔵家)

   シテ(使いの者)野村万蔵 アド(主)野村拳之介 小アド(太郎冠者)野村万之丞 小アド(女)野村眞之介

能 『千手』・郢曲之舞

   シテ(千手の前)山崎正道 ツレ(平重衡)小田切康陽 ワキ(狩野介宗茂)森常好

   笛:松田弘之 小鼓:鵜澤洋太郎 大鼓:柿原光博 

   地頭:梅若実 副地頭:角当行雄 地謡:梅若紀彰ほか

 

お稽古している梅若会のお能にはできるだけ行こうとしている。舞の型や、謡の節が勉強になるし、お能も、梅若の謡本を事前学習しておくと、よく理解できるし、全体的に親しみが持てる。

師匠の梅若紀彰師も、必ずどこかには出演されるし。若手の成長も観られる、なんて、素人が生意気ですね。

 

入口に建設中だったマンションビルが一応完成したらしく、入居はまだのようだったけど、梅若能楽学院会館へ向かう経路が、マンション1階の軒下のようなところになり、歩きやすくなる。風の通り道になってしまった。寒い。

 

最初の仕舞3曲は女流。不知の曲ばかりだったけど、基本的な舞の型の勉強にはなる。しっかりと、舞っていただけました。

 

連吟『鞍馬天狗』も、大体のストーリーは知っているが、どこの箇所の連吟かはわからず。シテの、若手松山隆之さんが謡い出すと、なかなか透き通るような若いお声で、よろしいのではないでしょうか。松山隆雄さんのご子息のハズ。

 

舞囃子『百萬』は、先日そのお能は観たはずなのに、箇所が良くわからない。多分、念佛の唱え方を教える下りかな。

舞囃子というのは、お能の一部を、面や装束は着けずに、地歌と囃子方は付いて舞うモノなんですね。だから、謡が、素謡ではなくて、拍子謡になる、ということが、やっと理解できた。

お能の一歩手前。

 

連吟『杜若』。これもどの箇所か思いつかなかった。

事前のチラシでは、シテを梅若実、ワキと地謡を梅若紀彰、地謡角当直隆と発表されていたのに、当日配布された番組表では、シテを梅若紀彰、ワキと地謡を角当直隆と書かれていたので、あれまあ、実先生お疲れかな、なんて思っていたら、やはり、当初発表通りとのアナウンス。

実先生が謡い出すと、惚れ惚れです。ひげ面で貫禄もあって、切り戸口から支えられながら登場したが、謡は全然衰えなど垣間見えない。素晴らしい。

ここで、すでに、この日の会は満足。

 

休憩後の狂言は『伊文字』。シテが野村万蔵であって、アド達が、その小達なので、親子全員出演。シテ使いの者と小アド女を、同じ役者が務めることもあろうが、子が3人居るから、女だけの役割にしたか。

例の如く妻を得ようと清水寺に参籠すると、西門の階にいる女が妻となるとの御宣託。太郎冠者が見に行くと、その通りだが、住まいを聞くと、女は「恋しくば 問いても来たれ 伊勢の国 伊勢寺本に 住むぞわらわは」と歌を読んで去ってしまう。

太郎冠者は、「恋しくば 問いても来たれ い」までしか覚えていないから、その下の句を確かめようと、歌関を作る。通行料を取るのではないから良いのだと。そこに来たシテ使いの者が、歌関に捕まって、色々と・・、というお話で、よく知っている。

どういう訳か、ここで突然の意識喪失。寝てしまう。折角ここから野村万蔵の芸を観ようと思っていたのに。どうして、突然、前触れなく寝るかね。がっかり。

万蔵の3子の内、万之丞は長男で、よく出演しているし、上手。ただ弟たちはまだかな。

 

能『千手』は2回目だが、今回は郢曲之舞との小書き付き。観世流にしかない小書きだそう。

郢(えい)とは、春秋時代の楚の国の都。郢曲とは、郢の人々が歌が上手だったことから、流行歌とでも言う意味らしい。広辞苑による。

そういう小書きで、謡の詞章がかなり省略された上に、舞が充実してくる。イロエの後に序ノ舞(中ノ舞)が続き、更に、シテとツレの相舞になる。

一ノ谷の合戦で捕らえられて鎌倉に護送されているツレ平重衡とそれを慰めようと頼朝から派遣される遊女のシテ千手。

この2人の、ツレ重衡が都に再護送されて、処刑されてしまう前の、一夜の琵琶と舞の遊び。これが主眼の曲なので、舞が多くて、楽しい舞だと相応しい。

しかも、別れと死を予感させる中での、一夜の遊びと恋なので、悲しみと一夜の熱気とを伴う舞。

相舞が相応しいと思う。

初回観たのは、2022年1月の金剛流。このときは、ストーリーとして楽しんだとのブログになっている。

お能としては、この小書き付きで、舞がたっぷりな方が良いような。ザ、能です。

梅若謡本は、小書き無しのモノなので、どこが省略されていたか、追うのが大変。

でも、実先生の地頭は、やはり最高で。今度も貴人口からの入退場でした。角当行雄、梅若紀彰師との地謡は、舞も良かったけど、謡いも素晴らしい。

小鼓の鵜澤洋太郎。大倉流ですよね。習っている観世流とは、手が違うのだろうか。掛け声は違う。三地やツヅケは、良くわからなかった。

 

高等遊民で、能楽中毒者、素謡と仕舞、小鼓稽古中の者は、あれこれ観て、確かめる部分が多くて、観能も忙しい。でも楽しい。