3月20日(日) 梅若能楽学院会館
能 『盛久』
シテ(平盛久)松山隆之 ワキ(土屋三郎)大日方寛 ワキヅレ(太刀取)則久英志
アイ(土屋の下人)内藤連
笛:一噌隆之 小鼓:田邊恭資 大鼓:柿原弘和 地頭:梅若実 地謡:梅若紀彰
面:直面
(休憩)
狂言 『花盗人』 (和泉流 万作の会)
シテ(三位)野村万作 アド(何某)石田幸雄
(休憩)
能 『山姥』
シテ(山女 山姥)山中迓晶 ツレ(遊女百ま山姥)川口晃平 ワキ(従者)福王和幸
アイ(境川の里人)深田博治
笛:藤田貴寬 小鼓:曽和伊喜夫 大鼓:大倉慶之助 太鼓:小寺真佐人 地頭:角当行雄
面:前シテ・深井? 後シテ・山姥 ツレ・連面?
『盛久』は2回目。2020年2月の式能以来。その時は、人間国宝大槻文藏師がシテだった。今回は、梅若の若手松山隆之がシテ。父親の松山隆雄は後見。
地頭に梅若実。今回は、貴人口ではなくて切り戸口から登場。途中退場もせず、体調は前よりは良さそう。副地頭に紀彰師。お二方とも、大きな口を開けて、気持ち良さそうに謡っていらっしゃる。『当麻』の時とは違う。
梅若謡本を入手していて、事前に読んできたから、良く解った。
平家方の武将盛久は、平家滅亡後、捕らえられて、鎌倉に護送される。その途上に、清水寺に参詣し、観音経を唱えてから、鎌倉へ道行き。いざ首を打たれんと由比ヶ浜に連れ出されるが、観音経の奇瑞があって、首を打たんとする太刀が二つに折れる。感心した鎌倉殿は、盛久を許す。所望され、感謝の舞をしたのち、去って行く。
鎌倉の、今は、大通り沿いに、その処刑場の碑がある。
謡本を読んでいくと、ストーリーや謡い方が良く解って、楽しい。梅若だから謡いに親近感がある。シテもツレも、教わったとおりの歌い方で、謡本通り。ただ、ちょこっとだけお勉強した小鼓の手が、ちょこっとだけ理解できて、素謡ではなくして、拍子謡の謡い方も、初めて、そうなるんだ、と理解できて、楽しさが膨らむ。
シテの松山隆之は、若さもあって、声も良いし、舞がキチンとしていて、感心した。上手。将来有望。
実師も良かった。4月9日(土)の三老女【姥捨』シテもできるか。
梅若謡本『姥捨』も買ってきた。読み込みましょう。
狂言『花盗人』、これまでの直近2回は、いずれも大藏流の東次郎家、東次郎さんシテだった。今回も、人間国宝野村万作。
すごいねえ。あのお歳で。
立衆は登場せず。
再び桜の枝を盗もうと忍び込んだシテは、見つかって、捕まってしまい、桜木に縛られる。
縛められている間に、詠む和歌。理解できたのは、「観てみての 人に語らん 桜花 手に手にとりて 家づとにせん」かな。
他にも、読めと言われた一首。「この春は 花の元にて 名は尽きぬ 烏帽子桜を 人やいうらん」かな。ここまでは解ったようだけど、合っているかは不明。2019年5月のブログに書いてある和歌とは違うようだ。
解放されて、感心されて、酒を酌み交わして、小歌や舞を披露。盗人なのに、却って、桜枝のお土産を貰って、帰る、という春の優雅な曲。
とにかく、万作の演技の素晴らしさに、大いに感心。声の枯れ具合が悪化したようなイメージだけど、素晴らしい。見逃せないなあ。
能『山姥』は初見。これも、梅若謡本を読んできたので、楽しかった。よく理解できた。
山姥をクセ舞にして有名になった遊女の百ま山姥。彼女がツレ。ワキの従者達を連れて善光寺詣りに出かける。当時の遊女は、金もあるし教養人なのですね。装束は、朱入りのモノ。都の京から善光寺に行くには、滋賀の浦を通って、北陸経由。その道行きも解る。
いざ、難路の山越えにかかろうとすると、急に日が暮れて、宿がなくて困っていると、前シテが現れて宿を貸そうと申し出る。ありがたくツレ一行が受けると、山姥のクセ舞を見せろと。それが観たくて宿を貸したのだ、と。実は、前シテは山姥その人で、自分が対象の舞を観たいという執心があると。夜遊で見せてくれと言い置いて、消え去る。
物着して、山姥へ。
後場は、ツヨ吟謡と、豪勢な勇ましい舞。クセ。カケリ、キリの舞。
シテの山中迓晶さんは、まだはじめの頃に観たのだけど、その時は、腕が震えていて、緊張していたか。でも、今回は、経験を積んで、しっかりと、拍も大きく踏んで、堂々と舞。
良かったです。
今回は、能2曲とも、比較的若手のシテで、二人とも、確りしていて、良かったです。拍を踏むタイミングと音、良い感じ。
小鼓の楽しさも解ったような気がして、楽しい会でした。
狂言も素晴らしかったし。午前11時開始は、朝早くて大変だけど、良かった。
今後も、梅若会を観ましょうね。必ず謡本を事前に読み込んでから。当面は、4月の定式能。『千手』。楽しみに。