2月20日(日) 国立能楽堂

能 『半蔀』 (喜多流)

  シテ(女 夕顔の幽霊)中村邦夫 ワキ(雲林院の僧)飯冨雅介 アイ(所の者)野村万之丞

  笛:松田弘之 小鼓:曽和鼓堂 大鼓:大藏慶之助 地頭:大村定

狂言 『杭か人か』 (和泉流 野村万蔵家)

  シテ(太郎冠者)野村万蔵 アド(主)野村萬

(休憩)

能 『百萬』 (観世流 銕仙会)

  シテ(百萬)井上裕久 子方(百萬の子)武田智継 ワキ(男)殿田謙吉 

  アイ(門前ノ者)山本泰太郎

  笛:大野誠 小鼓:幸正昭 大鼓:守家由訓 太鼓:林雄一郎 地頭:武田宗和

(休憩)

狂言 『柑子』 (大藏流 山本東次郎家)

  シテ(太郎冠者)山本東次郎 アド(主)山本則孝

能 『恋重荷』 (金春流)

  シテ(老人山階の荘司 荘司の幽霊)本田光洋 ツレ(女御)山中一馬 ワキ(臣下)福王和幸

  アイ(?)善竹十郎

  笛:栗林祐輔 小鼓:観世新九郎 大鼓:國川純 太鼓:三島元太郎

附祝言 『千秋楽』

 

能『半蔀』、初めてだけど、DVDを持っているし、対訳本も持っているので、親しみがある。ストーリーも解っている。

しかし、しかし、ほとんど寝てしまった。対訳本を持っていくのを忘れたこともある。昼食後で、眠くなる時間でもある。でもあそこまで寝るとは。

ワキ旅僧が、花供養をしていると、前シテ女が出てくる。どうも、夕顔の幽霊らしい。アイが出てきて、源氏物語について語る。ここくらいまででも、うとうとしつつ。その後、序ノ舞などが美しく舞われるはずなのだけど、寝てしまって、記憶がない。

 

狂言『杭か人か』、初めて。人間国宝野村萬が出演するから、目が覚める。万蔵さん、髪の毛を後ろで結んでいる。

和泉流だけにある曲らしい。

いつも主が出かけると、遊びに出かけてしまうらしい太郎冠者。確かめようと、蔭で見極めるアド主。今回は、気になったか、最初は、在宅して謡などを謡って過ごすシテ太郎冠者。段々飽きてきて、いちゃに会いに行こうかとも考えるが、夜回りしようと棒を抱えて出かける。闇夜で、主の姿が杭のように見えて、恐怖心から驚きつつも、杭ならばと安心するが、そこで、実は主だと。

その時に、シテ太郎冠者が、そのモノに対して、持参の棒で突きつつ、「杭か、人か」と尋ねる。軽い声で、「クイ」と答えるアド主。それで杭だと思って安心するおかしさ。

野村萬、万蔵の演技は素晴らしい。人間国宝と、当主。素晴らしい組み合わせだ。主と太郎冠者の人間関係。

 

能『百萬』も初めて。良く出る曲らしい。能ドットコムのストーリーを持っていったから、良く解ったし、観世流だからか親しみがあって詞章も解って、よろしいです。聞き取りやすい。

ある男(アイ)が、可愛い子供を拾ったかして、大念佛に連れて行き、楽しい念佛でも見せてくれと頼む。門前ノ男のアイは、わざとだろうけど、下手くそな念佛を唱えて、まるで狂言風な変な拍子の念佛なので、念佛の上手という百萬を呼び出し、登場してきて、こんなんじゃダメよ、と見本を見せる。アイの泰太郎さんの念佛は、ホントにおかしい。

百萬というのは実在した人物で、芸能者らしい。

そこで、子方は、もしかしたら実の母ではないかと気づき、ワキ男に問うが、ワキ男は半信半疑。シテ百萬は、狂って、舞を沢山舞う。それで、男も子方が百萬の子だと信じ、シテに渡してあげて、めでたく共に帰って行く、という子別れのハッピーエンド物語。

シテの舞が、沢山あって、優美で素晴らしい。

子方が、まだ4~5歳くらいか、ほんの子どもなのに、キチンと装束を着けて、セリフもあって、ホントに可愛い。

ストーリーもさることながら、実在した芸達者を主人公にしたお能なので、大変に難しいだろうし、上手の舞が観られて、楽しい。

これは、眠くならない。さっきの眠さはどこ行った。

 

狂言『柑子』、記録上は3回目。直近は、2022年1月狂言堂で、野村万蔵家。

そこを、東次郎家は、きっちりと、はっきりと。三つ成の蜜柑を出せと言われたときに、太郎冠者が密かに食べてしまったとつぶやくが、こうだったかなあ。

とにかく、一つひとつ、食べてしまった言い訳をする。最後は、俊寛僧都に習って、一人残された俊寛と同じく、ひとつ残った蜜柑は、「ろくはら」に収まったという、例のオチで。

東次郎家は、ホントに安心して観ていられる。眠くなる訳がない。

 

最後は能『恋重荷』、初めてだけど、類曲の『綾鼓』はDVDもあって、親しみはある。

シテの荘司、というのは庭師なんだね。前シテは、みすぼらしい姿で登場する。藁の締め帯。それが高貴な女御に恋をしているというので、女御も、みんなもからかってやろうと言うことで、巌が入った、重い重い荷を、何回も運べば、女御が顔くらいは拝ませてやろうと。

うれしくなった前シテ荘司は、でも、重くて持ちきれないから、その庭で死んでしまう。

後場になって、その死体を観に庭に降りてくるツレ女御。あれまあ、死んじまったべさ。

そこに、後シテ荘司の幽霊が登場。今度は、それなりの衣装。杖を持っている。その杖で、ツレ女御を打ち付けるような仕草もして、責め立てる。後悔してか、泣き崩れるツレ女御。それを見て、弔ってくれるならば守護神になりましょう、と、後シテ。消えてゆく。

庭に、死体が放置されていて、臣下や女御が、眺めるのですね。結構、どぎつい。

高貴な美女女御と、卑しい庭師。一方的な恋を募らせる庭師、からかう女御。死んでしまって、驚きつつ、幽霊に責められて、後悔か、懺悔か。それで許す。

なかなかの名曲でした。金春流あまり好きではなかったけど、良かったです。

 

附祝言があって、『千秋楽』。これも観世流とは違って、節が少し違うので、奇妙な感じ。ああ、流派でこんなに違うのだなあ。

 

終演が、19時過ぎ。疲れました。どこかに寄って、一杯飲んで夕食が望ましいが、家近くまで来ると、すでに20時を回るので、飲む食事ができない。さっと帰って、自宅で作る。かように疲れたときは、酒が欲しい。

でも、結局寝たのは、能1曲だけ。集中力は、全般的に落ちていた。

翁付きで能5番と狂言4番。もう無理っしょ。