2月13日(日) 横浜能楽堂

狂言組 (大藏流 山本東次郎家)

『隠傘』 

  シテ(太郎冠者)山本則重 アド(主)山本凜太郎 アド(売り手)山本則孝

(休憩)

『骨皮』

  シテ(新発意)山本則秀 アド(住持)山本東次郎 アド(傘借)若松隆

  アド(馬借)山本修三郎 アド(斎主)山本泰太郎

お話し 山本東次郎

  小舞 『海道下り』

 

東次郎家の狂言は、安心して観ることができる。

 

『隠傘』、記録上では初回になっているが、そうかな。『宝の槌』という狂言類曲があり、そちらは20年1月に東次郎家と、21年2月に善竹家で観ている。

天下泰平の御代なれば、宝物くらべをしようと入手してくるようにシテ太郎冠者に言い付けるアド主。都に出かけて声を出して求める田舎者、それを聞いていたアド売り手が、すっぱですね、鎮西八郎為朝が、蓬莱島の鬼から奪ってきた隠傘がここにあるから売ってあげようという。鬼の宝とは、他には、隠蓑と打出小槌。鬼の宝の3点セットです。

所有者が被らないと姿が消えないと誤魔化して、太郎冠者に被らせて、見えない、見えないと嘘を言うすっぱな売り手。代金は万匹と超高額だが、騙されて太郎冠者は購入し、意気揚々と主に持って帰る。主に隠れ傘を被らせるも、消えない。騙されたと気付く太郎冠者。今度は太郎冠者に被らせて消えるところを見たい主。なんとか断ろうとするが、断り切れない。当然に、太郎冠者は消えない。主の後ろに隠れて、消えたことにしようとするも、バレてしまう。

面目ない、許されられい、やるまいぞ、でお仕舞い。

凜太郎君が、立派になって、もはや独り立ちかしら。貫禄すら感じられる。

良くなった。

 

『骨皮』、これは初めてかも。以下は、後の東次郎さんの解説によって解ったこともある。

アド住持が歳も取ったので、隠居して、寺をシテ新発意に譲ると。院政を敷きたいので、あれこれ、シテ新発意に指導して、優位に立ちたい。旦那(檀家)を大事にせよとも。

傘を借りに来た旦那に、唐傘を貸してしまって、怒られる新発意。その断り方を伝授する。骨と皮がばらばらになってしまった、といえ。

次ぎに、馬を借りに来た旦那がいたので、傘の時の断り口を真似して断るが、その断りようはダメだと言われて、怒られてしまう。痩せたので、青菜を食べさせようと山の上に連れたが、落っこちて腰をしたたか打ってしまって、動けず、厩の隅にて寝かせてある、といえ。

次いで、旦那が斎に誘いに来るが、新発意は、時分は行くけど、住持は行けないと、馬の時の断り口で断ってしまって、一人だけで行くことにしてしまう。

怒った住持。これには、いよいよ新発意も反撃して、先日、門前のいちゃを部屋に連れ込んだではないか、と欠点を突く。いちゃ、ってのは若い女性のことで、それを自分の部屋に連れ込んだ住持。見られていたのです。邪淫戒か。住持は言い訳するが、笑い飛ばして鬱憤を晴らしたい新発意。投げ飛ばし合いの喧嘩になるが、まあ、若い新発意の勝利。

いちゃ、って、そういう意味なんですね。「いちゃいちゃする」という言葉があるのも、語源的に関係しているかしら。

世代交代に伴う、様々な争い。思惑。主導権の奪い合い。それを狂言風に笑って。

この曲の後見に凜太郎さんが付いていた。ふむふむ。

 

お話しの東次郎さん。さすがですね。良く解りました。

プログラムには載っていない小舞を披露して頂く。このところ、こういう小舞が多い。

今回は『海道下り』。『街道下り』かも。京から始まって、瀬田を過ぎて、関ヶ原までの道行きの謡と小舞。海道ならば、もっと早くに南下するかな。関ヶ原まで行くとすると、東山道方面だから、街道かな、なんて。

東次郎さんの小舞を観させて頂くと、毎回、ウルウルするのです。良くまあ、あのお歳で、膝も悪いのに。

 

高等遊民。今年は68歳になるけど、いつまで仕舞ができるだろうか。ちょこっと、小鼓など囃子も習いたいなと思うけど、ご迷惑かな、無理かな。