2月5日(土) 国立能楽堂

能 『熊野』 (宝生流)

  シテ(熊野)小倉伸二郎 ツレ(朝顔)藤井秋雅 ワキ(平宗盛)御厨誠吾 ワキヅレ(従者)則久英志

  笛:八反田智子 小鼓:鳥山直也 大鼓:大倉栄太郎 地頭:武田孝史

  面:シテ・節木増 ツレ・小面

(休憩)

狂言 『節分』 (大藏流 山本東次郎家)

  シテ(鬼)山本凜太郎 アド(女)山本泰太郎

能 『小鍛冶』・黒頭 (観世流 梅若?)

  シテ(童子 稲荷明神)川口晃平 ワキ(小鍛冶宗近)福王和幸 ワキツレ(橘道成)矢野昌平

  アイ(宗近の家人)山本則秀 主後見:梅若紀彰

  笛:竹市学 小鼓:森貴史 大鼓:佃良太郎 太鼓:田中達 地頭:山階彌右衛門

  面:前シテ・大童子 後シテ・飛出

 

国立能楽堂の養成事業で、「若手能」を開催してきていたらしく、今回は30回目だと。

知っている曲ばかりだし、若手の、はっきりした動きも良いではないかと、行ってみた。

脇正面などは空いている。

 

能『熊野』、公演としてみたのが4回目。直近は、2021年8月の金春流櫻間会。謡としても、習い終わったばかりで、詞章はほぼ暗記している。

勿論ワタクシは梅若謡本であって、今回は宝生流だから、むしろ違いはどこにあるのかな、という感心。

謡の違いは、流派の違いもあるだろうけど、囃子方が入るかどうかも大きいな、と思った。舞はほぼ同じ。

ただ、どうしたわけか、眠くて眠くて。大体この時間は毎日眠くなるのだけれど、気が付くと寝ている。寝たり起きたりで、時間的には半分以上寝ていたのではないか。詞章は暗記しているから、目覚めてもどのシーンかすぐに解る。安心していると、また寝る。

小倉伸二郎さん、1974年生まれ、50歳前。イマイチかなあ。曲種にも寄るが、迫力が、ね。ただ謡っているだけのような気がして。悲しい物語なのだから、心迫るモノがないと。演技力。

というわけで、この時点では、若手能に来て失敗したかな、という気持ち。

 

休憩を経て狂言『節分』。3回目。全部東次郎家。初回の2020年2月は、シテ凜太郎、アド泰太郎と今回と同じ配役。2回目は2021年12月で、シテ則秀、アド凜太郎でした。

今回のシテ凜太郎君は、記憶上だけど、2年前と格段の進歩を感じられた。というか、2年前は筋ばかり負っていて、役者の技量までは観られなかったかも。

面を付けて、大きな声を出して、動きも大きくて、大変だけど、若者らしく、立派でした。

後見に東次郎さんがでてきて、ピシッとした。

小歌の中で、わからない言葉が出てきて、メモもできなかった。

ストーリーは、この時期に相応しく、蓬莱島から日本にやってきたシテ鬼が、夫が出雲大社に年取りに出かけて1人でいるアド女に、ちょっかいを出す。初めは、飯をくれ、美人だと知って言い寄る。しかしアド女は追い出す。泣き出すシテ鬼。一計を案じてなびいた振りをして鬼の宝物、隠れ傘、隠れ蓑、打ち出の小槌を出させる。すっかり亭主気取りのシテ鬼を、豆をまいて追い出すアド女。

ムムム、やはり若手能も、悪くないか。凜太郎君、良かった。

 

能『小鍛冶』。4回目だけど、2021年1月のシテ紀彰師が目に焼き付いている。今回は黒頭の小書き付き。紀彰師の時は、黒頭だけでは無く、別習いの小書きも。ただ、この違いは良く解らなかった。

その関係だろうけど、主後見に紀彰師がいる。残念ながら、席からシテ柱に完全に隠れてしまって見えない。

梅若謡本を持っていったけど、やや詞章が異なったのは、きっと宗家の謡本なのでしょう。ただ、シテ謡やシテ語りは梅若の通りだった。

一条帝の命令で剣を打つことになってしまうワキ宗近。腕の良い相槌がいないので、稲荷明神に詣でると、前シテ童子が現れて、古今の名刀の謂われなどを語る。ヤマトタケル(日本武尊)の草薙剣とか。炎を払う様など。手伝うよといいつつ、稲荷山に消えていく。

この出の有様、結構格好良くて、紀彰師の動きに似ているかなあ。消え去り方はちょっと違ったかなあ。

後場も力強い動きと謡で、良かったです。

ただ、なんと言っても紀彰師シテの時とは違うのです。是非、その時のブログを読んでください。感動の違いが表現に出ている。ウルウルもしなかったし。

でも、若手能としては、上々の出来だったと思います。川口さん、良くなってきたと思います。

 

この『小鍛冶』の時、当日発表で副地頭が交替。すると、地頭以外の座席配置が順々に交替になって、1列目、見所から観て一番右に、新しいシテ方が配置。こういうの、”地割り”というらしいのだけど、こういう風に変わっていくのは初めて体験した。誰が、指図するのだろうか。

 

高等遊民、能楽中毒者、これからどうしましょうか。