1月21日(金) 国立能楽堂
狂言 『文荷』 (和泉流 野村万作の会)
シテ(太郎冠者)深田博治 アド(主)野村萬斎 小アド(次郎冠者)内藤連
(休憩)
能 『千手』 (金剛流)
シテ(千手の前)種田道一 ツレ(平重衡)豊嶋晃嗣 ワキ(狩野介宗茂)江崎鉄次郎
笛:杉信太朗 小鼓:幸正佳 大鼓:柿原光博 地頭:今井克紀
面:孫次郎
狂言『文担』、記録上4回目だけど、初めて理解したこともあって、楽しい。
単に、老人が若衆に恋をして、言い寄るお話しと思っていた。
実は、この恋は、みんなにバレていたのでした。シテ主は、アド太郎冠者と二人の秘密と思っていたが、次郎冠者にも、奥様にもバレていて、だから、家来たちは、奥様が嫌がるからと、恋文を届けるのを嫌がる。
しかもその恋文というのも、若衆(稚児、小人といっていた)から、今晩来てね、という手紙の返事でした。
そして、冠者が笑うのは、その恋文の内容が稚拙であるだけではなくて、字が下手ということも。
いくら、男色、稚児好みといっても、奥様は嫌がるし、家来たちも笑うのですね。更に、子供ができないから、お家の存続には関係ないからやめて欲しいとも言う。
能『恋重荷』とは、大分違う。もっと庶民的というか、実際的というか。さすがに狂言。
こういう所まで理解できるようになった。高等遊民。さすが、と自画自賛。
能『千手』、初めて。対訳本が買ってあるのを会場に行って初めて思い出す始末だったが、プログラムで良くお勉強していたので、よく理解できた、楽しかった。
ワキ平重衡は、平家の武将だけど、清盛の子どもで、文武両道の武将。命じられて南都焼き討ちをする責任者。だから最終的に首を落とされる。
1184年2月の一ノ谷の合戦で捕らえられ、都に送られ、更に鎌倉へ。その鎌倉でのこと。
同年3月が壇ノ浦、6月に、重衡は都で斬首される。
こういう歴史もキチンと理解すると、楽しさが増す。
鎌倉では、頼朝から、シテ千手が側目として渡される。頼朝は、自分の女をあてがったのでは無いか。
雨の一夜、琵琶と琴を持って、徒然を慰めるために、シテ千手が、ワキ宗茂に捕らわれているツレ重衡を訪れる。ツレ重衡は、敵方の武将であって、鎌倉にとっては最高の待遇をしている。舞台上も、ワキ宗茂は、ツレ重衡の部下のよう。そうだろうね、最高の捕虜というか、平氏の最高に近い武将だもんね。
その夜、シテ千手と、ツレ重衡は、管弦を楽しみ、短い一夜を共にする。物語上は、その翌朝、鎌倉方の武士たちに送られて、ツレ重衡は都へ。その時の、シテ千手との別れ。
二人が、すれ違う様に、何やら手と手を取り合うような。丁度、目付柱の影でよく見えない。詞章では「袖と袖との露涙」と。
良い感じ。
笛の杉信太朗。久しぶりだが、良いねえ。
シテの種田さん。1954年生まれ、同年代。まだまだ若い感じで、舞も、謡もしっかり。
クセ舞は、謡と一緒なんで、序ノ舞は舞囃子みたいなんだって、初めて解るおろかさよ。
どちらも、舞は良かった。金剛流だけど、梅若に近いかな。
高等遊民。能楽中毒者。大分進化してきた。