1月10日(月・祝) 横浜にぎわい座

開口一番 前座 三遊亭けろよん 『八九升』

三遊亭鯛好 『鯉好』

三遊亭兼好 『辰巳の辻占』

(仲入)

三遊亭兼好 『陸奥間違い』

 

新年初笑いは、にぎわい座で兼好独演会。兼好は、とにかく笑わせる噺家を自認しているから、軽い笑い話ばかりで、新年初回には相応しいのだ。

 

前座の開口一番は、珍しいことになった。マクラは、よく言う「さんぼう」で、どろぼう、つんぼう、けちんぼうの噺は、どの寄席でも嫌われない、ということで、普通ならば、けちん坊の吝い話に行くかと思ったら、なんとなんと、聴力障害者の差別用語である「つんぼう」話しに行く。

『八九升』、初めて聞く話しだ。昔は、前座話として入門訓練話だったそうだが、今は、禁止話に近い。

この前座、勇気あるね。兼好の4番弟子だそうだが、兼好も許したのだね。それともいきなりの口演か。

耳の遠い大旦那と、顔つきはにこやかで、実は悪口雑言ばかり言う番頭との掛け合い。内容は、洒落というか、くだらない掛け合いばかりで、聴きごたえなどは無いのだ。

米はどのくらい残っているか、と問う大旦那、面倒くさい番頭はこよりを大旦那の鼻に突っ込む、はっくしょん、ああ、八から九升か、ということで、お題名。

 

40歳で入門して、今は二つ目という鯛好。五代目円楽一門だから年齢制限無くして入門できたとか。これも兼好の弟子。

良く「鯛」好ではなくて、めくりなどで、「鯉」好と間違われる、という自己紹介かと思ったら、これが新作落語かしら。珍しい噺家ではあるが、つまらん。40歳入門が売りというだけ。

 

兼好の2席は、いずれも、聞いたことが無い噺。

『辰巳の辻占』。若旦那が、自分だけが好きなんだと言っている女郎に夢中で、伯父に預けてあるお金を返して欲しい、それをその女郎にあげる、という。騙されているに決まっているから、叔父さん一計を案じて、金ができないから心中して欲しいと入って見ろと。大川に飛び込む。困った女郎、替わりに大きな石を投げ込む、若旦那も困って大きな石を投げ込むという、艶笑話。

若旦那の振りや語り、女郎の仕草振りや語りが、絶品で面白い。大笑い。

 

『陸奥間違い』。金が無くて借金をしたい御家人下級武士。まずは、借金を依頼する手紙を使いの者に持たせる。それが、宛先の人物住まいを知らないモノだから、仙台藩の大名家に持っていってしまう。間違えているに違いないとは思うが、そこの家来が、友だという口上を信じて、というか、間違いがあってはならぬと善解、忖度して、お殿様にお手紙を見せてしまう。

間違いだとは思ったが、その殿様、楽しんでしまって、10両貸せというが仙台藩だから1000両に違いないと断じて、1000両も貸す。

貸された下級武士。大いに困って、知恵モノに相談しようというが、また間違って、今度は外様では無く、老中家の和泉ノ守に持って行ってしまう。

それが更に将軍様にまで届いて、大いに感服し、1000両はそのまま貸せ、返す必要なし、替わりに、名前を下賜する、とにかくおめでたい噺。間違いが、間違いを呼んで、良い方向にばかり転がっていくという、ご祝儀話。新年に相応しい。

最初に、借金を申し込んだのが、陸奥の守、ということでお題名。

 

兼好、良いね。新年大笑いしました。高等遊民、能楽中毒だけではないのです。

やはり、今年も、落語も沢山聞いていきましょう。