1月8日(土) 梅若能楽学院会館
『翁』 翁:梅若紀彰、梅若長左衛門
面箱:山本凜太郎 三番三:山本則重 千歳:角当直隆
笛:竹市学 小鼓:飯田清一(頭取)、住駒充彦、曽和伊喜夫 大鼓:大倉慶之助
太鼓:梶谷英樹 地頭:山崎正道
『三社風流』 (大藏流 山本東次郎家)
天照大神:山本東次郎 春日明神:山本則孝 八幡大菩薩:山本泰太郎
地頭:山本則俊
(休憩)
連吟 『蘆刈』
シテ 梅若英寿
仕舞 『老松』 松山隆雄
『羽衣』・キリ 会田昇
『猩々』 小田切康陽 地頭:角当直隆
半能 『高砂』・祝言之式
後シテ(住吉明神)角当行雄 ワキ(阿蘇友成)工藤和哉
笛:藤田次郎 小鼓:曽和正博 大鼓:安福光雄 太鼓:小寺佐七 地頭:梅若紀彰
楽しみに、楽しみにしていて、朝から興奮状態。どういう風に二人翁がなるんだろう、紀彰先生は別火したんだろうな、またあの山本家の『三社風流』が観られるんだ、半能の『高砂』って、など・・
『翁』。9回目。切り火が切られて、翁渡り。凜太郎君が、実に素晴らしい姿形で面箱を持って登場。頭が上下しないで、一歩一歩キチンと摺り足。思わず、凜太郎君上手になったねえ、と。
続いて、長左衛門さん、紀彰先生の順。紀彰先生も、まったくフラつかず、綺麗な足運びで。目がしっかと前を向く。余計な微動はしない。
舞台に入って、正面でお辞儀。これが、前の時もそうだったが、紀彰先生は素晴らしく、深く、背筋が伸びた拝礼。首から下に落ちるということはないのです。お稽古でもよく言われる、背中が丸まってはいけないと。
とうとうたらり、と始まる翁の謡い。良い声だ。張りがある。そこに、地謡が重なると、もはや、じ~んとして、ウルウル。地謡も揃って、迫力ある。
千歳の角当直隆さん。キリリとして、宜しい舞。梅若会の若手たちは、上手になってきている。と、生意気にも思う。動きがキリッとしていて、目がキョロキョロしないのが良い。
十二月往来は、初めてだけど、どこかで読んだかしたことはある。二人翁の掛け合い。睦月から始まって、十二ヶ月分。
その後、二人翁の相舞。このときの白式尉面は、2つあるのは当然として、結構違う形の面。
とにかく、紀彰先生の翁は、威厳があり、ピシリと決まって、まさに、神の存在に近い。最前列で観ていたが、何かが降ってきそうな感じ。感動モノ。
役者は、勿論訓練も重要だろうけど、二人の翁をつい見比べてしまうと、天賦の才というのか、そんなモノが紀彰師にはあるのではないかとすら思えてくる。
翁退場後、三番三の揉ノ段。山本家のは、安心して観ていられる。則重さん。掛け声も決まって。烏飛びも。
鈴ノ段に移ろうとして、後見座に。そこで、具足をつけて、黒式尉を被る。で、ここで三社神が登場。面を付けているからはっきりしないが、後の発声やほおの膨らみから、天照大神:山本東次郎、春日明神:山本則孝、八幡大菩薩:山本泰太郎の順だと解る。世にも目出度き、具足をつけた三番三の舞を観ようと、神が登場するということらしい。
この『三社風流』は、狂言方の三番三の小書きみたいなモノか。
大変い珍しいモノで、2021年3月の山本会別会時のブログにも書いてあるように、復曲以来、山本東次郎家のみがこれで3回目。ワタクシは、その3回のすべてを観たことになる。すごいでしょ~。
その配役の違い。
千歳は、今回は、シテ方が上掛かりなので、シテ方が務めるのはお決まり。その代わり面箱が凜太郎で、変化無し。
三番三は、山本東次郎→則孝→則重
天照大神は、則俊→東次郎→東次郎
春日明神は、泰太郎→則俊→則孝
八幡大菩薩は、則孝→泰太郎→泰太郎、でした。
山本会のHPによると、2022年は、他のどこでも「三社風流」の予定は無いようだから、もしかして、3回全部観た見所は、関係者以外は、ワタクシくらいでは無いか、と自慢したい。見巧者になってます。
連吟『蘆刈』。シテを務めるはずであった梅若実が、風邪によって休演との情報が貼り出されていて、じゃあどうなっちゃうのかと思っていたら、なんとなんと、地頭というかシテの位置に、梅若英寿君が着席。いきなりシテ謡から入ったが、大きな声で、ちゃんとしていた。
大抜擢だね。チラシでは、英寿君は、最前列の舞台からみて左端、つまり、一番の新人の席だったのに。
仕舞3曲。舞手はベテラン。曲は、ワタクシでも知っている、習った曲。こういう曲で舞って頂くと、真剣に観ますね。ただ、紀彰先生のお稽古の時のお手本舞が目に付いている。ちょっと違うのです。
半能『高砂』。3回目だけど、部分的には謡も仕舞も習っているし、テレビなどでもよく観るし、よく知っている感じの曲。
ただ、半能という形式は初めてで、どうなるのだろうか、と。
ワキの名ノリから入って、例の「高砂や~」と謡って、「はや住江に着きにけり」と。
そこで、後シテの住吉明神が登場して、颯爽と神舞から、事実上始まるのでした。さすがのベテラン角当行雄さん。落ち着いた舞でした。
「げにさまざまの舞びめの~」からは、お仕舞いお稽古で。
地謡は、あまり出番がないので、地頭の紀彰先生の声は堪能できなかったけど、それでも、すぐに聞き分けられる良い声。最後に、「千秋楽は民を撫で・・」で終わる。
この「千秋楽」は、紀彩の会のスタートで、特にお願いしてお稽古をつけて頂いたモノ。先日は、金沢のお茶の時、一節謡ったモノ。紀彩の会の宴会の時にも、一緒に謡うのだ。
慣れ親しんだ、『高砂』でストレス無く終了。
良き、良き、素晴らしき新年の梅若初回でした。高等遊民、能楽中毒者、やめられない。