1月5日(水) 国立能楽堂
能 『松尾』 (宝生流)
シテ(老翁 松尾明神)武田孝史 ツレ(男)野口聡 ワキ(臣下)宝生欣哉
アイ(所の者)善竹隆司
笛:藤田次郎 小鼓:曽和正博 大鼓:佃良勝 太鼓:小寺真佐人 地頭:宝生和英
面:前シテ「小尉」 後シテ「神体」
(休憩)
狂言 『筑紫奥』 (大藏流 善竹家)
シテ(丹波の国の百姓)善竹大二郎 アド(筑紫の奥の百姓)善竹龍平 アド(奏者)大藏吉次郎
今年初の国立能楽堂公演。大鏡餅が設置されたおめでたい会場。舞台にも幣が飾られているし、お能の出演者の三役と地謡は全員裃。
翁だて五番能の形式によるか、脇能の『松尾』、脇狂言の『筑紫奥』の順で。いずれも、祝言性の高い曲。
『松尾』初めて。宝生流のみにある脇能曲だそう。
松尾大社は、京の西方、今の西区、四条通り西端にある神社らしい。東の賀茂神社と並んで、王城守護神らしい。
本地垂迹の時代。
前場は、ワキ天皇ノ臣下が、松尾神社に初めてお参りする。そこで、前シテ老翁と会って、本地垂迹やら神徳やらの、ワキとの語りが続く。真ノ次第、真ノ一声が心地よい響き。語りが多いが、大体慣れてきたので、難しい宗教用語以外はほぼ理解できる。
夜神楽を催すので、ワキ臣下に参加せよといいつつ、前シテは退場。
アイは、松尾明神の謂われを語る。善竹隆司の語りは、やや、ゆっくりすぎるのではないか。
後場は、神の冠を被った後シテ松尾明神が現れて、颯爽と、テンポ良く「神舞」を舞う。シテの武田孝史は67歳か。声もはっきりしていて、舞の動きも無駄がなく、立派。宝生流も、このクラスがしっかりしている。
地頭が宝生宗家とあったが、隣に座る辰巳満次郎(1959年生まれ)と区別がつかない。まだ宗家は若い。あるいは地頭が辰巳満次郎か。
狂言『筑紫奥』も初めて。
目出度い年貢を納めに上京する筑紫奥の百姓と丹波の百姓。同道して上京して奏者に渡す、というよくある年貢支払いモノ。
筑紫奥の百姓の方が金持ちか。ただ、丹波の方が京に近くて気位は上か。貢ぎ物からして、差があるし、田畑の面積も違うようだ。
いずれも目出度く納めることができて、良かった良かっただが、奏者がむすっとしていてうれしさが半分。そこで、語り合って奏者を笑わそうと相談。三人でともに笑おうということになって、例の狂言の笑いを、三人揃って。
で、それで順に退場してお終いという、とにかくの祝言狂言。
年初だから、2曲とも、とにかくおめでたいのだ。
さて、高等遊民の今年の能楽鑑賞は如何になるか。多分、相変わらずの能楽中毒。