12月2日(木) 横浜にぎわい座

開口一番  三遊亭二之吉 『手紙無筆』

柳家三三 『橋場の雪』

三遊亭王楽 『包丁』

(仲入)

柳家三三 『安兵衛道場破り』

 

前座の役割は、訓練と共に、座を温めるというか、これから登場する噺家のつなぎ役だろう。

それが、開口一番で、明らかな間違い、登場人物の名前を間違えてしまって、なんとか誤魔化すというか、繋げるモノだが、なんと、二之吉は、間違えました、と言って、やり直してしまうのだ。お稽古か。

『手紙無筆:』も途中で打ち切るし。丁度10分で終わったけど。失格。破門だね。

 

三三の『橋場の雪』にも、影響を与えてしまう。初めて聞く噺だった。夢の噺。夢の中で、橋場の渡り辺りで、川向こうに色っぽい後家が出てきて、ちょっと寄って行きなさいよ、まあまあ一杯飲んでという艶っぽいお話し。全部夢の噺だけど、それでも新妻は焼き餅を焼くという噺。割を食ったのは、夢の中で、浮気の手伝いをしたことになっている定吉。

面白い話しのようだけど、二之吉の失敗で、もう一つ客は盛り上がらない。

 

その盛り上がらない風は三遊亭王楽の『包丁』までも、乱れさせたか。

これも艶話で、友人に自分の妻と浮気をさせて、そこに乗り込んで、包丁を振りかざして、離縁させて、岡場所に売ってしまおうという計画の噺。

王楽は、好楽の子らしいが、2世はダメなのか、今日の出来が悪いのか。登場人物の、変化がよく聞こえない。誰のこと、って感じ。演じ分け。

下がるときに、苦々しい表情だったので、善解して、二之吉の責任にしよう。

 

そんな雰囲気を吹き飛ばしのが、三三のトリ『安兵衛道場破り』。さすがだね。

堀部安兵衛になる前の、中山安兵衛の時代。本国で禄を失い、江戸へ。一文無しになるが、道場破りという「商売」で、宿主が乗り気になっていくが、最後は、顔がばれて、実入りが少なくなる、という滑稽話。が、背景には、例の討ち入りの安兵衛がちらついて、苦労したんだねえ、という感じ。

その道場破りの「商売」の巧さが、ピタッと決まって、間も上手で、思わず笑っていました。これで二之吉の失敗は吹き飛んだ。

笑わそうとするのではなくして、笑ってしまう芸。当代一流の名人。

三三は、厳しい芸人で、弟子がおらず、あんな二之吉は許せないはず。風前の灯火。