11月21日(日) 国立能楽堂
舞囃子 『高砂』・八段之舞 観世清和
笛:一噌庸二 小鼓:大倉源次郎 大鼓:亀井忠雄 太鼓:小寺真佐人 地頭:岡久広
狂言 『枕物狂』
シテ(祖父)野村万作 アド(孫)野村太一郎 アド(孫)野村裕基 アド(乙)野村遼太
笛:一噌庸二 小鼓:大倉源次郎 大鼓:亀井広忠 太鼓:小寺真佐人 地頭:野村萬斎
(休憩)
狂言 『鬮罪人』
シテ(太郎冠者)野村萬斎 アド(主)石田幸雄 アド(立衆)深田博治、他
笛:一噌庸二 小鼓:大倉源次郎 大鼓:亀井広忠 太鼓:小寺真佐人
野村万作人間国宝の卒寿記念公演。ということで、開会前から緊張感がある。とても、狂言だけの会とは思えない。満席。
舞囃子『高砂』。万作の長寿を祝うおめでたの舞囃子。計画では、野村四郎幻雪が舞うハズだったとか。8月に亡くなってしまったので、観世宗家が、代役と言ってはなんだけど、埋められるのは観世宗家清和を措いてはない。
小鼓大倉源次郎と大鼓亀井忠雄にも人間国宝で、固める。
さすがに観世宗家。昔このブログで、御宗家だからといって上手な訳ではないと書いたような気がするが、失礼、無礼でした。しっかりした、きちっとした舞で、素晴らしかった。我が無知さに免じてお許しあれ。
地謡には、息子さんの観世三郎太が出ていて、そういう安心感というか、安定感も増してきたのではないだろうか。
狂言『枕物狂』が本日のメイン。爺さんが、孫のようなアド乙に恋をして、恥ずかしいような、会えてうれしいような、目出度いような。色に出にけり我が恋は。複雑な心理を、イヤラシくなくて、尊敬を集める爺の恋、という形で、立派に演じていました。
シテ祖父は、劇中では100歳、演ずる万作は90歳。年齢が近くなっている。アドも、孫世代。太一郎、裕基。立派に独り立ちしていて。万作も初めてこの役を演じたのが、還暦の年で、以後、74歳、84歳で演じてきたらしく、今日、卒寿90歳で。
白寿ではどうだろうか。最近人間国宝が亡くなるのが続いて、不吉なのだけど、ここは、万作の『枕物狂』、見納めのつもりで、しっかり鑑賞させていただいた。
萬斎が地頭で、思い切って謡っていたと同時に、しっかと目に焼き付けようと、父万作の動きを見つめていたのが印象的。萬斎が、この役を演じることができるのは、いつか。その時の地頭は裕基だろうか。
至芸を見させていただいた。
狂言『鬮罪人』、2度目かな。今回は、万作卒寿記念ということなのか、万作の会一門の総出演ということで選ばれた曲かも。
祇園会の山鉾の趣向を考える町内の人物。今年の頭役がアド主。色々口を出したいシテ太郎冠者。太郎冠者もうれしくて仕方がないのだろうが、嘴を挟みすぎる。町内の連中の取りなしもあって、渋々従うアド主。調子に乗るシテ太郎冠者。選ばれたのが、罪人が登ってきて、鬼が上から打ち据えるというモノ。更に、くじで割り振った役が、罪人=アド主、鬼=シテ太郎冠者という組み合わせ。
最後は怒りだして、シテ太郎冠者を追い出すアド主。才覚長けた太郎冠者と、御しきれない主。もともとの地位と、逆転できる山鉾劇の地位。それをビクビクしながらも楽しむ太郎冠者とむかつくアド主。面白い心理劇。
今回は、万作卒寿記念という「野村万作を観る会」。年に一度の会で、昨年はコロナで流れたらしい。来年は11月27日於国立能楽堂とアナウンスあり。行くべしと。
狂言の詞章が発表されていて、為になった。
度々狂言で聞く詞章に、「実(げ)にもさあり やようがりもそうよの やようがりもそうよの」というのがあって、どういう意味なのか不覚だったが、「まったく良かった、本当に良かった」の意味の囃子詞らしい。勉強になりました。