11月2日(火) 横浜にぎわい座

開口一番 古今亭菊一 『子ほめ』

三三 『釜泥』

古今亭文菊 『稽古屋』

(仲入)

三三 『質屋庫』

 

先月亡くなった柳家小三治の追悼番組が続いている。気付く限り録画してみてきた。

ナマ小三治でそれほど感動したことはないものの、まあ、観たという実感だけは残っていたが、番組を見ると、確かに50代以降の小三治は、古典落語に命をかけた名人であって、人間国宝に相応しい噺家であったのですね。

笑わそうと思ってはダメ、笑ってしまう話が良い、とか。登場人物を演じ別けるのだが、その人の気にならなければいけない、とか。

自分で満足する高座は年に一つか二つ、とか。

そんな番組を見ていて、三三は小三治の弟子トップ(と、ワタクシは思う)だから、えらく期待して臨んだ今日の会でした。

小三治とは親子会など良くやっていたから。

 

開口一番の前座、古今亭菊一。ネタは、『子ほめ』でなんと言うことはないが、本日のゲスト古今亭文菊の弟子なのかな。調べてみたら、柳家三三には、現在弟子がいない。柳家小かじというのが居たが、ホントかどうか知らないけど、小三治でしくじったらしくて、三三は破門にして、芸協にかわって、春風亭柳橋門下に移動。

三三も、繊細なのかもしれない。弟子が育たない。

 

その三三はまず『釜泥』。これは普通でしたね。小三治の追悼番組の見過ぎ。それとも、三三は、やや落ち込んでいるのだろうか。

 

古今亭文菊『稽古屋』。お姉風の、たゆやかな芸風。演目の『稽古屋』は、あまり聞いたことがない。演目の面白さより、踊りや清元のお稽古風景の噺がすばらしい。

丁度ワレも、謡仕舞のお稽古中だけど、お師匠さんは、当たり前だけど、キチンとできなくてはいけない。その師匠さんのフリを語るのだけど、文菊さん、自分でもできるから、こういう話ができるのです。こういう芸風というか、芸達者な噺家も多くはない。そこに女っぽさの色気が加わって。

 

トリは『質屋庫』。質物の念が籠もっていて、それが化け物化して、三番庫に出るという。それを確かめに行かされる番頭と出入りの鳶の熊さん。まず熊さんを呼びに行かされる丁稚と熊さんの掛け合い、旦那に怒られるというので、自分から酒菰や沢庵菰を、黙って貰ってきてしまたことを白状する様子、いざ三番庫の監視に向かう番頭と熊さん、実は2人とも大変な臆病で。そのドタバタ。

この噺は、登場人物は多くて、演じ分けが難しいのかもしれない。3人以上の会話はないのだけど、旦那、番頭、丁稚、熊さんという4人の演じ分けは、もう一つかな。2人だけの分けは面白かったです。

オチは、通常の、菅原道真の掛け軸が上がってきて、質入れした客に「利上げさせろ」、つまり利息だけを入れさせろ、「さもないとまた流されてしまうかもしれない」。太宰府に流されて頓死した道真の、洒落。

これが古典落語ですね。マクラ的に、「利上げ」の話をして、事実上解説していたから、そのオチの意味が解る。

オチだけの噺ではないから、これで良いのだけど、それに至る人物描写がメインの割に、このオチは、現代人には難しい。

 

柳家三三。良いと思います。小三治を失った喪失感から、立派に立ち直ってください。そして、人間国宝小三治の落語道を引き継いでください。柳家の系統は、どうなるのかしら。