8月18日(水) 神奈川県立音楽堂

開口一番 春風亭貫いち 『元犬』

春風亭一之輔 『加賀の千代』

柳家喬太郎 『梅津忠兵衛』

(仲入)

柳家喬太郎 『午後の保健室』

春風亭一之輔 『青菜』

 

よこはま落語会、というのがある。にぎわい座などの寄席や営業企画団体ではなくして、個人というか、グループというかで、人気の落語家を呼んできて、大体、横浜の公営施設を借りての落語会を企画している。

7月22日にも、同じ県立音楽堂で、一之輔の独演会を催していて、チケットも買っていたのだけど、丁度コロナワクチン接種2回目に当たってしまって、念のための副反応に備えて、チケットをあげてしまったので、実質的には、よこはま落語会デビューなのだ。

一之輔や、喬太郎、宮治など、なかなか趣味にあった落語家の会をしているから、ちょっと、今後も狙っていこうかと思う。

 

県立音楽堂は、ずっと前に、日フィルの定期演奏会で、息子と行ったことがある。息子がまだ小学生の頃だから、30年くらい前か。内部構造はすっかり忘れていた。結構大きいホール。そうだよね、日フィルの定期演奏会を、確か、県民ホールの代替でやったんだから。

一之輔だったかな、紅葉坂が大変、とマクラで喋っていたが、もう一段上の能楽堂に通っている身としては、楽じゃん。

ほぼ、9割以上の席が埋まる。

 

開口一番の貫いち『元犬』。18時45分開演になって、きっちりと15分の時間を消費しただけ。面白くもなんともない。下手。眠りはしなかった。

 

一之輔の登場。オリンピックばなしでマクラ。中止でも、延期でも良いのですが、と、空手の型の話し。あの女子選手、ピシッと決まって格好いいと。それに比べて、落語家は、だらっと座っているだけだと。段々盛り上がってくる。

『加賀の千代』。ご隠居宅に行って、8円5~60銭借りてこいと妻に命じられた男。20円とふっかけて高めに言うのが金を借りてくる極意だと。そんなモノかと男。ご隠居はこの男が好きで堪らないから、すっと、20円差し出すと、困った男。様子を見て、100円か、200円か、幾らでも貸すと言い出す。実は・・と自白する。そこでオチなのだが、何で、加賀の千代か、よくわからない。

聞いたことある噺。間が良いねえ。ポンッと返す言葉、態度。上手いねえ。

 

喬太郎は、新作の『梅津忠兵衛』。これは初。山中で、突然女から赤子を預かり、女は姿を消す、その赤子は段々と重くなり、捨て去っても良いのだが、可愛いし、捨てられず、重いし、困って南無阿弥陀仏と3度唱えると、赤子は消え去って、さっきの女が実は氏神だと言って現れ、お礼をする。そのおかげで、更に一層力強くなったという怪談話。

なんでも、小泉八雲の同名小説を、喬太郎が落語にしたものだとか。良いねえ、喬太郎の真骨頂。お笑い話と怪談話の融合。

 

仲入後の喬太郎。なんだか、今日はノリノリ。崎陽軒のシュウマイ弁当中の筍煮物の話しで、十分盛り上げ、学校寄席の面白い体験などを喋る。十分湧かせておいて、『午後の保健室』。これも初めてだけど、喬太郎の新作。大人ぶった口調の3年生と、ヤンキー的な校長、実は還暦で若ぶっている保険の女子教師、3人の掛け合い。

今朝、YouTubeを観たらば、『午後の保健室』があって、どうやらそこでも学校寄席のマクラ。で、語りぶりは、おんなじ。実は、周到に用意されたマクラと演目だったのだ。この演目は、7分程度なので、マクラで20分以上使わないとならないのです。

爆笑。

 

それを受けて、一之輔。話し始めるが、何故か、出囃子が鳴る。貫いち君、首にしますよ、と。と、そこに着替え途中の喬太郎が下手から出てきて、首にしないでください。これには一之輔も驚いたか。喬太郎のいたづらでしょう。

演目は『青菜』。簡単に喋ると15分で終わってしまうのだが、さまざま膨らませて話していく。鯉の洗いを食べる様、上手そう。冷えた柳影も美味しそう。帰宅して、女房を隠しておいて、友達と、お屋敷のご隠居の台詞を再現したい。が、なかなかうまく行かない。「鞍馬の山から降りてきまして、その名は九郎判官」「義経にしておけ」が、羨ましいのです。自分を隠居、友達を植木屋、女房を奥様にして、再現ごっこしたい。

何度も聞いた噺だけど、今回ほどじっくり、たっぷりはなかった。上手いねえ。爆笑に次ぐ爆笑。

 

実に愉快な落語会だったが、喬太郎にやや不安。躁状態に見える。もしかしたら、喬太郎は、家では実に無口だったりして。弟子もいないし。独身。桂枝雀にちょっと似た風があって、心配。実生活との落差がありすぎると、枝雀の二の舞にならんか。あれだけ、会場を沸かせるのも、実は、周到な準備をしてきている。更に、着替え中の登場は、盛り上がった自己興奮のなせる技で。

柳家喬太郎。1963年生まれ。