8月7日(土) 川崎能楽堂

狂言 『謀生種』 (和泉流 野村万作の会)

  シテ(伯父)石田幸雄 アド(甥)野村遼太

仕舞 『松風』 友枝昭世

能 『玉鬘』 (喜多流)

  シテ(里女 玉鬘の霊)中村邦夫 ワキ(旅僧)大日方寛 アイ(門前ノ者)野村太一郎

  笛:栗林祐輔 小鼓:森貴史 大鼓:柿原孝則 地頭:長島茂

 

川崎市定期能。簡単にチケットを取れることが分かったから、取ってみた。当時は、暇だと思ったし、第一部の『玉鬘』も第二部の『阿漕』も初見だから。

一部の席は、B-16で、中正面の最前列で、丁度目付柱のところ。目前に目付柱が来ると、さすがに邪魔。

 

狂言『謀生種』、初めてと記録では。

ストーリーは、法螺吹き合戦をする伯父と甥。大きな嘘をつく。富士山に紙袋をかける、近江の湖で茶を点てる、播磨にいる牛が淡路島の草を食う、三里四方の太鼓を見た、その太鼓の皮は先ほどの牛だ、と。

ここまでで、あれ、観たことあるかも、と気付くが、記録以前なんだな。

最後に、負けを認めた甥が伯父に秘訣を尋ねると、伯父は、嘘の種があって、そこに埋めてあるから掘れ、と。掘っても見つからない。そういう一粒の種があることが嘘なのだ、でオチ。伯父が、うつけ、うつけ、甥がやるまいぞ、やるまいぞ。

アド甥の野村遼太。万作の外孫だと。1991年生まれ。若いけど、まあまあ。まだ迫力などはないけど。

後見に野村裕基。1999年生まれ。万作の会も、この世代が多くなったね。

 

仕舞『松風』、人間国宝友枝昭世。これは見応えがあった。しっかりと、きっちりと、狂わず。型を決める。動きがなめらかで、かつブレない。まったくのお手本。

 

能『玉鬘』、これも初見だけど、今年の7月に国立能楽堂定例公演で、同じ喜多流で上演されていて、パンフレットを持っていたので、その詞章を見ながら鑑賞。

源氏物語の「玉鬘十帖」が元。要するにモテまくった美人の玉鬘が、モテたことでの、恋の妄執、と懺悔、成仏という話し。何で言い寄られて悩まなくちゃ行けないのですかね、と思うのは現代人か。

前場は、棹を手にして小舟に乗った態で登場した前シテ里の女と、ワキ旅僧、地謡で進行する。とてもとても、パンフの詞章があったから良かったけど、ないと理解できず、睡魔に襲われるだろう。周りも撃沈が多い。

シテの中村邦夫。ずっと、長い時間、常座で立ちっぱなしで動かず。ここで迫力と緊張感が出てくると最高ですが、まずまずは動かず。立っているだけで、ただ立つだけで、こちらが緊張してくる舞台を見た経験がある。あれは、大槻文蔵さんだったかな。

中入りのアイ野村太一郎。しっかりして良かったんじゃないかな。こういう、ザ・中入り語りも、ちゃんと出来る。

後場は、後シテが顔から下左側面に黒髪を一条流して登場。髪が妄執の象徴か。長い黒髪が、美人の証でもあったよね。また、寝乱れた黒髪に哀れというか色気が感じられる。そういう詞章になっている。

だから、後場も面白い舞も無い。全体的に、あまり興味が湧く物語ではないな。

新しいお能を観た、ということ。

 

川崎能楽堂は、設備が悪い。控えの場所も少ないし、トイレも不十分。椅子も狭い。建て替えが必要だけど、ねえ。

見所と近いのは良いけど。最前列の目の高さと、舞台の床が同じくらい。役者の足下がよく見える。ハコビがよく見える。