8月5日(木) 国立能楽堂
狂言 『真奪』 (大蔵流 山本東次郎家)
シテ(太郎冠者)山本則秀 アド(主)山本則俊 アド(通りの者)山本則重
装束付け実演解説 東川光夫(宝生流シテ方) 柳家緑太(マネキン)
(休憩)
能 『是界』・白頭
シテ(山伏 是界坊)宝生和英 ツレ(太朗坊)小倉健太郎 ワキ(比叡山の僧)野口能弘
アイ(能力)若松隆
笛:一噌幸弘 小鼓:森澤勇司 大鼓:柿原弘和 太鼓:林雄一郎 地頭:野月聡
面:後シテ・白べし見
猛烈な地獄的暑さの中でも、出かける。
狂言『真奪』、初めて。類曲に『太刀奪』があって、見た記憶だけど、記録にない。ただ、間もなく今月の狂言堂で『太刀奪』を観る予定。
立花の会に持っていく真(立花の中心になる枝のことらしい。)を探しに、東山に出かける主従。太郎冠者に太刀を持たせる。途中で、立派な真を持った人に通りかかって、太郎冠者が頑張って貰ってくる、と言い置き、実際に奪うのだが、揉み合うときに、太刀と真が交換状態になってしまう。意気揚々と帰るシテ太郎冠者。重代の太刀と交換とはなんとすると叱られて、今度は太刀を奪い返そうと待ち伏せる。
アド通りの者は、太刀を得て大喜び。仕合わせだと。太郎冠者が嫌がるので主自ら飛びかかって後ろから羽交い締めにして捕らえる。で、縄を打てと言うが、そこで縄を綯い始める。これは舞台上で実際に行って、上手なもの。
縄が出来たが、戒めようとするもうまく行かない。手を出せ、足を出せと言っても出すはずがない。そこで、後ろから縄をかけるが、さっとアド通りの者は身をかがめて、アド主だけをしばってしまう。さっと逃げ出す通りの者。やるまいぞと追いかける2人。太刀は取り返したのだったかな。
隣の伯母さんが、声を出してケラケラと笑うので、そんなに、という感じ。笑って良いのだけど、狂言風には、うふふ、とか、あはは、ではないのかな。大声のケラケラは如何なものか。
オチも何も『太刀奪』にそっくり。さて、どんな心理劇か。主に良いとこ見せたいけど、非常にどんくさい太郎冠者。主は見栄ばかり。諸侍がどうのこうのと。
次回狂言堂は、同じく大蔵流の茂山千五郎家。そこでも考えましょう。
ここで、装束付け実演。何も知らないらしい落語家をマネキンにして、4人がかりで。普通は10分ほどでやるらしいが、時間をかけて20分。宝生流、たまにこういう企画やるよな。面白いけど。緑太は暑そうだった。面も付けて、見にくそうだった。
一度経験してみたいなあ。
羽団扇は、ホンモノの猛禽類、鷹や鷲の羽を使って、一頭で一つしか作れないのだそう。模様が会わないから。色々な色を持ちたくて、現在宝生流では八つ持っているそう。全部重代のものなので、大切で、もし壊れたら補充が効かない。保護鳥だから。
能『是界』は、『善界』を含めて二度目。下掛かりは『是界』、観世流では『善界』、金剛流では『是我意』だと。前回は2019年8月京都観世会館での『善界』。
ストーリーは単純で、大唐の天狗の頭領が、かつて神国であった小国日本が仏法国になっていることをなんとかせんと、飛んできて、愛宕山のツレ太朗坊と協力して、行力を試して、我が方に誘因せんとする。対する日本は、勅諚をもって、比叡山の大僧正・飯室の僧正が立ち向かい、諸天仏とも闘うが、法力に負けて、逃げ帰る。
前場は、簡単な山伏姿の前シテが登場して、ツレ太郎坊と語り合い、地謡が状況を説明するだけ。国立能楽堂のモニターがあるから解るけど、そうでないと、解らないで、絶対に眠くなる。
後場は、今度はたいそうな山伏装束の是界坊。白頭の小書き付きなので、白物衣装、白頭、白い大兜巾、太い杖を持ち、羽団扇を背に刺す。面は、べし見だけど、よく見れば、髭がある。更に、眼には金泥が。とにかく、強そうなのです。
それが、来序で出てきて、一声、イロエ、舞働と、勇壮で力強い舞を披露。
対するワキ僧正は、作り物の車の中。
最後は、祈り倒されて、もう来ないぞという声を残して、雲路に入って消えていく。
この辺りの動きや、囃子方が勇壮で、気持ちよい。最後も、ピタッと終わって、良い感じ。五番目物だけど、附祝言はなかった。
宝生の御宗家。まだ、若い。けど、どんどんシテを勤めなくちゃならなくて、大変ですね。ツイッターをしていて、ゆっくりした動きで身体が痛いだの、これを来週もやらなくちゃ行けないだの、喋っている。何だかなあ。
悪くはないけど。威厳はまだないよね。