7月16日(金) 宝生能楽堂

ミニ講座 大島輝久(喜多流シテ方)

能 『鶴亀』 (観世流 銕仙会)

  シテ(皇帝)観世銕之丞 ツレ(鶴)馬野正基 ツレ(亀)長山桂三 ワキ(大臣)殿田謙吉

  アイ(官人)三宅近成

  笛:槻宅聡 小鼓:飯田清一 大鼓:柿原弘和 太鼓:梶谷英樹 地頭:山本順之

  面:紹介なかったけど、シテは直面、ツレ(鶴)は小面か、ツレ(亀)は中将か

(休憩)

狂言 『文蔵』 (大蔵流 山本東次郎家)

  シテ(主)山本東次郎 アド(太郎冠者)山本泰太郎

仕舞 『忠度』 宝生和英

    『井筒』 金剛龍謹

    『熊坂』 金春憲和

(休憩)

能 『通小町』 (喜多流)

  シテ(深草の少将の霊)友枝昭世 ツレ(里の女 小野小町の霊)長島茂 ワキ(僧)宝生欣哉

  笛:藤田次郎 小鼓:田邊恭資 大鼓:亀井広忠 地頭:出雲康雅

  面:紹介なかったけど、シテは怪士か、ツレは小面か。

附祝言 千秋楽

 

去年の納涼能はコロナで中止になっていた。2年ぶりだけど、一昨年に引き続いて43回。中止になった去年とできるだけ同じ演目にしたと。発売日には満席だったけど、しばらくしてトライしたら買えた。

当日は、正面後方にもまだ若干の空席があって、あの売り切れは何だったんだろう。

 

能『鶴亀』は3回目で、前回は、2020年11月鎌倉能舞台で観世流。その時は、鶴さんも亀さんも中学生の出演だったが、今回は錚々たるメンバーで、キチンとした『鶴亀』。シテ皇帝は決まりで直面だけど、両ツレは面。じっくり観て解ったことに、ツレ(鶴)は装束も表も女性、ツレ(亀)は装束も面も男性だった。これが正しいのかな。

初めの笛のピーッと鳴る一声。これが、前回はブスブスブスだった。やはりあれは失敗だったんだと納得。今回の笛は槻宅さん。

お話しは、ほぼなくて、皇帝の長寿を祝う舞。ツレの二人の相舞、惹かれて登場するシテの舞。皆さん素晴らしく。取り分け銕之丞さん素晴らしく。おめでたい、おめでたいと。

こういう、素人の初めての練習曲を立派な玄人が舞う、謡うのは、お能の素晴らしさを示す。ピアノの練習とは違うぜ。

 

狂言『文蔵』は2回目。2021年5月に、同じ東次郎さんシテで観ている。前回のアド太郎冠者は、則孝さん。

何度聞いても、源平盛衰記の石橋山合戦物語を、床几に座りながら語る、仕方話。東次郎さんの淀みのない芸。至高の芸。

 

仕舞三曲。シテは、宝生流、金剛流、金春流のそれぞれの宗家。オンパレードだね。宗家イコール名人ではないところが、苦しいところでしょう、とやや同情。

直近で、梅若紀彰師の仕舞『熊坂』を観ていたので、どうしても比較してしまうけど、長刀の戦いなのだから、もっと切れよく、迫力も出して、と思ってしまう。型の連続だけではなくて、役柄を込めてと思ってしまう。紀彰師の弟子だからか。

 

能『通小町』、初めて。

小町モノの一つ。どうも能作者たちは、小野小町に含むところがあるのかしら。才色兼備の女性に対して、年取ってからのこと、プライドはあるけど、暮らし向きは良くないというようなことを書いているよう。

これも、深草の少将が百夜通いを目指して、最後の日に死んでしまうお話しをベースに、小町は成仏したがっているのに、遊ばれたと思っている深草少将の怨霊は、小町成仏を妨害して、袖をつかんだりもするけど、百夜通いの情景をワキ僧に示している内に、何故か、突然、2人揃って仲良く成仏してしまうというお話し。ありゃりゃ、なんだけど、まあ良いか。

舞はほとんどなくて、仕方話や、型の披露くらい。でも人間国宝友枝昭世さんの姿は、キチンとして素晴らしい。シテは、後場しか出てこないのだけど。

持っていった反訳シリーズは、観世流を基にしているから、喜多流とは大分違って、それはそれで面白かった。シテの登場シーンも、喜多流は、幕の内からの呼びかけが多い。あの世からの霊の声だからそれでも良いのかも。ちょっと、流儀の違いを認識できたのは良かった。

附き祝言の千秋楽も、謡い方の違いがわかる。観世、梅若の方が良いと感じるのは、そっちで習ったから。

 

梅雨明けの日でした。暑くて。でも良かった。