4月18日(日) 梅若能楽学院会館

仕舞 『巴』 髙橋栄子

    『敦盛』クセ 三吉徹子   地頭:梅若長左衛門

舞囃子 『芦刈』 井上燎治

   笛:藤田次郎 小鼓:観世新九郎 大鼓:柿原光博 地頭:松山隆雄

連吟 『田村』 梅若紀彰 山崎正道

    『八島』 松山隆雄 川口晃平

(休憩)

狂言 『鬼瓦』 (和泉流 野村万作家)

  シテ(大名)野村万作 アド(太郎冠者)月崎晴夫

能 『通盛』 (観世流梅若会)

  シテ(漁翁 通盛の幽霊)角当行雄 ツレ(女 小宰相の幽霊)山中迓晶 ワキ(僧)森常好

  アイ(所の者)内藤連

  笛:藤田次郎 小鼓:観世新九郎 大鼓:柿原光博 太鼓:小寺佐七 地頭:梅若実 地謡:梅若紀彰・他

 

市松席とは言え、それでもかなりの空席があって、寂しい。宣伝が少ない、遅い。HPに載ったりするのは、3週間くらい前か。他の能楽の会は、3ヶ月以上前から宣伝しているし、国立能楽堂や横浜能楽堂でのチラシ置きもない。これでは、身内だけの会になってしまって、経済的な面は知らないけど、演者の緊張感も薄れてしまうのではないかと、余計な、心配。

 

女流の仕舞2曲。これは、もともと配布公開されていたプログラムとは違って、少なくともワタクシは、当日配布のパンフで初めて知る。HPには書いてあったようでしたが。これはこちらの読み不足。

 

舞囃子『芦刈』。井上燎治さんという方は梅若会ではないと思う。初お目見えかしら。かなりの高齢の方でした。

始まりの地謡と囃子が続く中、井上さん、間違って早く立ち上がってしまう。どこかの合図を間違えたのかどうかは知らぬが、地頭の松山隆雄さんから止められていた。適切なタイミングで仕切り直し。その間演奏や謡が止まることはない。

 

連吟2曲。これは素晴らしい。

とりわけ師匠の紀彰師がシテを謡う『田村』。春宵一刻~から、中入まで。丁度、練習中の箇所とぴったり一致で、今度予定されているお稽古発表会では、ワタクシがシテで、6名で連吟する予定。完全に、見本をとしてじっくり聞かせていただく。

勿論練習中だから、暗唱はできていないけど、頭の中では、ご一緒させていただく。

紀彰先生は、相変わらずの美声だし、息継ぎが、その箇所まで解って、勉強になる。

『八島』は、老練な松山さんと、中堅というかの川口さん。川口さんの声や発声は聞き取りやすく、その連携が上手い具合で、よろしかったです。今度、謡でこの曲をお稽古しようか、なんて。

今日の紀彰先生は、色紋付きではなくして、地謡も連吟も黒紋付き。

 

狂言『鬼瓦』。人間国宝野村万作師がシテ。それにしては見所が寂しくて、勿体ないというか、申し訳ないというか。また、来月、万作萬斎の会がある。

初めての曲かも知れないが、訴訟に勝って久しぶりに帰国する前に、何か、という辺りは『萩大名』と同じ。お世話になっていた因幡堂にお礼参りに行こうと。そこの本尊薬師如来を自国に勧進しようと、アド太郎冠者と二人、堂の作りなどをよく見ておこうと。シテ大名が、あちこち見上げながら様子を語るのは、実際に見上げているようで、さすが。勧進しようという喜びも溢れる。

ずっと見て、あれはなんじゃと、鬼瓦を見る。その顔つきは、どう考えても可愛いと言うより恐ろしいのだけど、目つきや、かっと耳まで開いた口が、国元の妻に似ていると、泣き出す。怖がっているのではない、出立を見送る時の妻の表情を思い出し、懐かしんで、泣く。ホントかいな。間もなく会えるのだから、泣くことではないとアド太郎冠者に指摘されて、その通りじゃ、と、例の狂言の笑いを二人で。それでお終い。

あの泣きと、笑いに切り替えるのは、ナンなんだろうか。鬼瓦のような女房殿も、懐かしいのだろうか、本心は逃げたいのだろうか。

 

能『通盛』、初めて。

心配していた地頭の梅若実先生。椅子には座られたが、移動は以前よりスムーズで、安心。声も衰えず、しっかりと地頭。これこそ人間国宝の謡。

予習十分にしていたので、ストーリーや舞台展開は解っていたけど、前場はほとんど詞章を聞き取れず、寝てしまった。

シテの角当行雄さん。梅若会では、最高齢の重鎮ではないのかしら。81歳かな。上手すぎるのも聞き取れないし。

ツレの山中迓晶さんは、中堅だけど、前場で、舟の作り物の中でじっと下に居だったり、立ち上がったりだけど、その動きのない中で、しっかりと動かないでいたのが、良い印象。確か前に見たときは、腕が震えていたほど緊張していた様子だったが。多分ご子息のかたが、地謡に入っていられた。

梅若でなくても、角当さん、松山さん、山崎さん、小田切さん、山中さんまで親子で。梅若会の次代を。

後シテの通盛幽霊も、若いはずだから、そういうキビキビ感が欲しいところ。刀を抜くのにうまく行かなかったり。そうだ、前場で、角当行雄さん、前シテのセリフを間違えたかして、訂正の後見が入った。ご高齢だし、間違えてしまうのはやむを得ないが、それを揚げつらうこともないけど、見所としては、残念というか、驚くというか、ああと嘆息したくなるとか。

緊張感の問題かしら。梅若会の求心力が、どうなっているのかしら、と。

紀彰先生のご活躍に期待します。簡単な感想としては、紀彰先生シテの『通盛』を観てみたかった。

次代に継承させるまでの、中心として。